令和8年度町長施政方針
令和8年度(2026年度)町長施政方針
令和8年度予算案の提出にあたりまして、施政方針を申し述べる機会をいただき、ありがとうございます。昨年と同様、葉山町は本年も穏やかな新年を迎えることができました。また、昨年は、猛暑、酷暑や7月30日のカムチャツカ半島付近の地震に伴う津波警報等はありましたが、町内に直接大きな被害をもたらす災害はなく、総じて平穏な一年でありました。
しかし、全国に目を向けますと、昨年は林野火災が多く、年が明けてからも各地で火災の報道が続いています。中でも岩手県大船渡市の林野火災は、葉山町のほぼ2倍の面積となる約3,370ヘクタールの林野が焼失し、住宅90棟が焼損、1名の尊い命が失われるという甚大な被害をもたらしました。また、住宅火災においても、11月には大分県大分市で強風注意報発表中に発生した火災により、住宅187棟が焼損するという大規模な被害が発生し、強風時の火災の危険性を改めて実感させられました。
これらを気候変動の一端として捉えれば、災害の激甚化は国内にとどまらず、世界各地で頻発しています。多くの人々がこの現状に危機感を抱き、声を上げ、温暖化防止や脱プラスチックなどへの行動変容が進んでいます。
葉山町におきましては、家庭ごみの戸別収集・資源ステーション方式の採用や、はやまクリーンプログラムの展開など、独自の環境施策に長年取組んでまいりました。昨年はその一環として、マイタンブラーの普及を目指したキャンペーンを実施し、本年3月には表彰式やシンポジウムを開催いたします。また、昨年3月からは町民の皆様に生ごみの分別をお願いし、8月には生ごみ資源化処理施設も本格稼働を始めました。分別区分が28品目となり、可燃ごみ収集日の減少など、町民の皆様にはご負担をおかけしておりますが、町全体でごみの総量は約20%削減され、日々の自家処理や分別にご協力いただいていることに、心より感謝申し上げます。秋には「環境フェス」を開催し、リユース市や環境啓発に関する各種展示、また生ごみ資源化処理施設の見学会などを皆様とともに開催しました。とても多くのご参加で賑わい、大人の学びの場、社会科見学とも言われて大変好評を博しました。
生ごみ資源化処理施設は順調に稼働しておりますが、分解率が高く、堆肥がほとんど発生しない状態が続いております。本年度は、慶應義塾大学理工学部の宮本憲二教授をアドバイザーに迎え、さらなる安定稼働を目指し、堆肥化の標準仕様の確立や、安定供給に向けた分析、研究を進め、他自治体への展開も期待しています。
生活や未来に直結する重要な環境への配慮・貢献は、葉山の人や地域が一丸となって長年取組み、現在の一人ひとりの行動変容、環境保全保護活動へとつながっています。それが昨年末、エシカルな暮らしや人々のつながりがある町として評価され、環境省主催「第13回グッドライフアワード」において、環境大臣賞・優秀賞をいただくことにつながりました。まさに、町民の皆様全員が協力して得た大きな評価です。心から町の皆様に感謝とお祝いを申し上げたいと思います。これからも環境の町、葉山として、地球環境への貢献とサステナビリティをまちづくりの基礎に据え、取組みを進めてまいります。
そのような考え方をベースに基本方針をまとめた第五次葉山町総合計画は、昨年3月に策定をすることができ、計画の中で「ウェルビーイング」という言葉を初めて明記しました。すべての町民が心身ともに健やかで、安心して暮らせる町を目指すという新たな指針を示すものです。
ICTやAIの進展、経済発展やグローバリズムの進行は、人々のつながり方や価値観の多様化を促し、社会情勢や社会構造、さらには暮らしやコミュニティー形成のあり方を大きく、そして急速に変化させています。そのような時代にあって、人口減少や物価高騰も相まって、社会を支え、補完する行政の役割は一層重要性を増していくものと認識しています。
かつて2000年代には、「民間にできることは民間に」、「聖域なき構造改革」といった考え方のもと、小さな政府を志向し、行政の守備範囲を縮小してきた時代がありました。しかし現在は、行政が果たすべき役割を改めて見極めたうえで、行政の守備範囲を適切に拡充し、必要な財源を確保したうえで必要な施設や機材を更新し、これまでの果たすべき役割以上に付加価値をもって担うことが求められる時代になってきていると考えています。
その一例が公共交通です。駅のない町である葉山町にとって、路線バスを中心とした公共交通は町民の暮らしを支える重要なライフラインです。しかし、働き方改革や人手不足などを背景に、バスの減便は止まらず、移動手段の確保が一層困難になっています。移動手段の確保ができなければ、私たちの生活の維持に支障をきたすことが明白であり、免許返納を促進していることからも、町にとって決して欠かせない分野です。こうした認識のもと、一昨年からタクシー券補助やシェアサイクル支援、はやまるタクシーの試行などを進め、昨年末にははやまるタクシーの無料券を配布するなど、暮らしを支える民間の取組みと連携しながら、新たな行政の福祉施策のあり方をまさに模索しているさなかにあります。なお、本年度は、はやまるタクシーにおいて、現在実施しているデマンド型乗合形式の実証運行について、運行時間の延長や乗降ポイントの拡充を図り、より利用しやすい環境整備に努める一方で、利用状況や地域公共交通会議のご意見もいただきながら、「定時定路線型」の実証運行についても検討してまいります。
また、昨夏には「公共施設等将来構想」を発表し、町の財政や地域の活力を見据えた施設再編の基本方針を定めました。建設から50年近くになる施設が増え、老朽化が著しいことから、学校校舎をはじめ、今後、莫大な予算を投入して施設整備にかかります。しかし、とりわけ建替えにあたっては、従来通りの行政施設を再設定し整備するだけではいけません。地域や各団体の活動を支え、スポーツや文化の振興、健康増進につながる幅広い価値や可能性を検討する必要があります。使いやすさや時代の変化への柔軟な対応が可能な施設であることを重視する一方で、量的にも過剰な整備とならないよう、将来負担の軽減にも十分配慮しなければなりません。ニーズと量を見極め、見誤った施設整備とならないよう、慎重な判断が求められます。公共施設の整備は、未来の葉山町の姿を左右する、大きな分水嶺となります。
このように、災害の激甚化や急速に変化する社会情勢の中で、住民の暮らしを支える市町村行政の責務は、ますます重いものとなっていきます。そのため、自治体間の広域連携や民間との連携、さまざまなチャネルを活用した財源の確保、情報連携の強化、さらにはAIやロボット技術を活用した業務の効率化や労働力の確保など、従来の枠にとらわれない新たなツールや連携の枠組みを取入れていかなければ、行政運営が立ち行かなくなることは容易に想像されます。
こうした状況の中で、行政だけでは解決できない課題や、それに向けた知恵や工夫、財源の確保など、葉山町のためにお力添えをいただける方々、各専門機関をはじめ、世代を超えた地域の皆様の声を丁寧に伺いながら、具体的な計画づくりを進めていく必要があります。膝を交え、対話と情報共有を重ねながら、できる限り多くの人が同じ方向を向いて町の将来を描けるよう、さまざまな場面で意見交換を行い、町民の皆様とともに、葉山の暮らしを支え、葉山の価値を守るまちづくりを進めてまいりたく思います。
さて、ここで令和8年度予算の前提となる財政状況と予算編成について申し上げます。はじめに歳入についてですが、堅調な企業収益や、1991(平成3)年以来34年ぶりの高水準となった昨年の賃上げを背景に、引き続き町税の増収を見込んでおります。しかしながら、町税の増収は地方交付税の抑制要因となることから、一般財源全体としては、大幅な増加を見込めない状況にあります。
一方、歳出におきましては、少子高齢化対策に伴う社会保障関係経費の増加や、公共施設の更新・老朽化対策経費に加え、円安基調による物価高騰や賃上げの影響が、すべての行政サービスの維持・ 運営コストに幅広く及んでおり、引き続き財政需要の増加が見込まれます。
令和8年度予算では、高水準の賃上げの影響を踏まえ、令和7年度を上回る町税62億円台を見込んでおりますが、これは一時的な要因によるものであり、少子高齢化に伴う人口減少により、中長期的には町税が減少していくことは避けられません。本町の財政状況が依然として厳しい局面にあることに変わりはありません。
このような厳しい財政状況のもとにおいても、持続可能な行政サ ービスを提供していくため、昨年6月に実施した「サマーレビュー」による事業内容の精査を踏まえ、引き続き強い緊張感をもって予算査定に臨み、限られた財源を真に必要な分野へ重点的かつ効率的に配分することで、町民の皆様の暮らしを支える予算となるよう努めております。
なお、今後の財政運営の指針として昨年6月にお示しした「中期財政見通し」につきましては、先行き不透明な世界情勢や、国による景気対策、地方財政措置の動向を注視しつつ、適宜内容の更新や見直しを行い、情勢の変化を踏まえた計画的な財政運営に取組んでまいります。可能な限り将来世代に負担を先送りすることなく、緊張感をもって健全財政の維持に努めることに決して変わりはありません。
それでは重点項目として抽出した主な事業のうち、特に施設整備を中心にご説明申し上げます。はじめに、学校施設につきましては、昨年6月に「葉山町公共施設等将来構想学校施設編」で、今後の学校施設整備の方針を示しました。新しい学校施設は、探究学習の拠点であり、地域に開かれた多世代がつながる共創空間としての「イノベーションコモンズ」について、より実践的なアプローチによる研究を進めるなど、多くの可能性を見込んでおります。
しかし、近年の出生数減少に伴う児童生徒数の減少や物価高騰の影響、さらには将来的な町の財政負担を踏まえ、設計にはより慎重な検討が必要であると判断し、財政面や地域連携、学校の付加価値とこれからの学校教育について、さらに1年間、検討を深めてまいります。これまで教育委員会や学校関係者、保護者、専門家の意見を伺いながら取りまとめてきた基本計画を踏まえ、財源の確保や地域社会への波及効果など、多面的な視点から議論をさらに深める年とし、広くご意見をいただいたうえで、実施設計へと移行してまいりたいと考えております。なお、既存の学校施設につきましては、長柄小学校のトイレ改修工事や、中学校屋内運動場の空調設備設置工事の設計など、教育環境の改善に引き続き取組んでまいります。
次に、臨御橋につきましては、令和元年度より寄附の受付を開始し、沢山の方々から応援をいただいておりましたが、いよいよ本年11月から補修・補強を交えた架け替え工事に着手いたします。11月から翌年5月までの渇水期に第一期工事を行い、橋脚等、橋の下部工事を行います。二期目にあたります令和9年11月からは欄干等の橋の上部工事を行い、令和10年春の完成を目指してまいります。工事中は近隣やご利用する皆様に通行止めなどご不便をおかけいたしますが、御用邸の町、西向きの砂浜の町、葉山を彩る大切な橋とし て将来にわたって利用できるよう復元いたしますので、もうしばらくお時間をいただきますが、完成にご期待ください。また、森戸海岸のみそぎ橋につきましては、昨年11月に工事に着手しており、現在、橋脚等の工事を進めております。令和9年度の完成を目指し、引き続き事業を進めてまいります。
次に、堀内会館につきましては、町への所有権移転と再整備についての検討や、これまでに実施した意見交換会でのご意見、「堀内会館再整備検討委員会」からの報告書、その後の意見交換等を踏まえ、令和11年度の供用開始を目標に、既存施設の解体及び設計業務に着手してまいります。
続いて、福祉文化会館ホールのリニューアルにつきましては、今後、舞台音響設備や照明設備等の改修に関する基本計画を策定し、それに基づく詳細設計を行います。あわせて、本年度はホワイエのトイレ改修工事を実施するとともに、福祉文化会館駐車場の舗装工事を行い、利用者の皆様がより快適に施設を利用できる環境づくりを着実に進めてまいります。
令和4年2月に始まった2市1町ごみ処理広域化実施計画に基づくクリーンセンター再整備につきましては、当初の予定より遅れはしたものの、昨年8月に完成し、現在、施設は順調に稼働しております。その遅れに起因していた逗子市における生ごみ分別及び搬入につきましては、実現に向け、引き続き協議を進めてまいります。また、施工業者からは増工事及び工事期間中の物価スライド分に係る増額分の支払いを求められておりますが、真摯に協議を重ね、根拠が明確に説明できるものにつきましては、相互に果たすべく責任として対応してまいりたいと思います。
重点項目の最後に、昨年度の施政方針において課題として挑戦を掲げた民泊対策について申し上げます。これまで葉山町観光協会、神奈川県鎌倉保健福祉事務所、葉山警察署、逗子市、鎌倉市などの関係行政機関、町内で宿泊事業を営む皆様や宿泊サイト運営者など、多方面から多大なるご協力をいただきながら、町独自の民泊のあり方について検討を進め、一定の方向性を示すことができました。心から感謝申し上げます。主には民泊事業者や来訪者の皆様に、地域の暮らしに寄り添った観光である「レスポンシブルツーリズム」を理解していただくことを、葉山町における民泊課題解決の第一歩と位置付けました。本年度は、日本語版及び外国語版の啓発冊子や動画を制作し、周知啓発を図ってまいります。今後も継続的に協議を重ね、法改正の動向や他自治体の事例を注視しながら、葉山町にふさわしい民泊のあり方を定めていく取組みを進めてまいります。
さて、ここからは既存事業も含め、葉山町行政機構各部における主な事業をご説明申し上げます。はじめに、教育委員会所管の主な事業についてですが、第五次総合計画の三つの大きな柱の一つである「楽校」のもと、教育支援の面では、不登校児童生徒のフリースクール利用に係る支援制度を創設し、高校生奨学給付金の支給方法の見直しにより経済的な支援を強化します。さらに、学校現場の課題解決に向けては、スクールロイヤーに相談できる体制を構築し、法的なサポート体制を整備します。また、GIGAスクール構想の推進として、1人1台タブレット端末の新機種への更新にあわせて、児童生徒が多様な本に出合う機会を増やすための読み放題型電子図書の導入、機器保守期間の終了に伴い、一度に処理できる通信デー タ量を増やし、安定した通信環境を実現するため、ルータ機能を有する校内ネットワークのファイアウォールの更新を行うなど、ICT環境の一層の充実を図ります。
外国語教育推進につきましては、新たにモデル校の1・2年生を対象にALT(外国人英語活動指導講師)を派遣し、外国語活動の授業を行います。低学年の発達段階に合わせた学習内容や指導体制の検証を進め、9年間を見通した学びの連続性を大切にしながら、子どもたちが正しい文法よりも、伝えていきたいという姿勢を育むことで、国際社会で自分らしく行動できる資質を育む取組みをより一層推進してまいります。
地域とともにつくる学校につきましては、「地域学校協働活動本部」の体制の定着を図り、学校と地域が連携した事業展開ができるよう、地域人材の発掘や学校間での情報共有を推進してまいります。
また、現在長柄小学校で実施している地域人材を講師とした「放課後ルーム」につきましては、他の3小学校において試行し、放課後においても子どもたちが安心して過ごすことができる環境づくりを推進してまいります。
次に、第五次総合計画の三つの大きな柱の一つである「健幸」の中心となる、福祉部所管の主な事業についてご説明申し上げます。子育て・子育ち分野において、多様な保育の充実により、すべてのこどもの育ちを応援し、良質な成育環境を整備するとともに、すべての子育て家庭に対して、多様な働き方やライフスタイルにかかわらず支援を強化するため、乳児等通園支援事業、通称こども誰でも通園制度を開始します。
また、魅力ある子育て環境づくりに向けて、乳幼児期から就学前まで切れ目のない支援体制を充実・強化するため、新たに「5歳児健診」を導入いたします。幼児期は、言語理解や社会性が大きく伸びるとともに、発達特性が明確になる重要な時期と言われており、本町では4歳6か月児を対象に5歳児健診を実施し、必要に応じて心理相談や療育につなげ、小学校入学までに適切な支援を受けられる体制を整えてまいります。
妊婦健診につきましては、県の方針に基づき、従来の補助券方式から受診券方式へ移行し、公費負担を従来の78,000円から111,000円へと大幅に拡充し、妊婦の経済的負担の軽減と健診項目の均一化を図ります。また、妊婦を対象にRSウイルスワクチン予防接種を実施し、乳児の健康の保持及び増進を図ります。
高齢介護分野におきましては、認知症のある要介護者が共同生活住居において家庭的な環境と地域住民との交流のもとで、利用者が持っている能力に応じて自立した日常生活を営むための支援を行うことにより、可能な限り住み慣れた地域での生活を継続できるよう、第9期「高齢者福祉計画・介護保険事業計画」に位置付けられている「認知症対応型共同生活介護事業所(グループホーム)」の整備を目指します。
増加する加齢性難聴高齢者における補聴器の適正な装用を促し、効果的な認知症等未病対策を推進することを目的に、新たに「きこえサポート事業」として、補聴器の購入費等に助成を行います。また、将来の介護サービスの安定的供給を確保するため、介護サービスの従事に必要な知識・技能を習得するための専門研修を受講する方に対し、受講費用を助成します。
障害福祉分野では、呼吸器機能障害等がある方を対象に、日常生活用具の支給対象品目に非常用電源装置を新たに追加します。町が行う講演会やイベントでの手話・要約筆記が円滑に実施できるよう、派遣費用等を福祉課で一元管理し、聴覚障害者が安心して参加できる環境整備の強化を進めてまいります。また、コロナ禍に伴い中断していた障害者理解促進イベントの開催を再開し、すべての人々が尊重し合い、共生できる地域社会の実現に向けて取組みます。
保健・医療分野では、感染症リスクが増す高齢者が健康で安心して暮らせるよう、高齢者等予防接種において、国が新たに予防効果が高いとして承認したインフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチンを接種できる環境を整備します。また、「逗子葉山地区災害時医療救護活動ガイドライン(第4版)」に基づく、災害時における医療救護所の運営方法等について、関係機関と連携・協議して定め、大規模災害に備えた医療体制を整備します。
次に、消防本部所管の主な事業についてご説明申し上げます。高齢化の進展に伴い、救急需要も増加の一途をたどっており、消防職員の増員と救急車の増車を図ります。職員定数を3名増員し、現行2台の救急車両により運用している救急体制を見直し、救急車3台による第3救急隊の運用準備を進めてまいります。あわせて、救急隊職員や搬送する傷病者の負担軽減のため、電動ストレッチャーを購入します。今後も高齢化率の上昇とともに、高齢者の搬送事案はさらに増加するものと考えられ、増加する救急事案に確実に対応できるよう体制の強化を図ってまいります。
また、昨年から急増している林野火災の発生や、今後起こるであろう南海トラフ地震、首都直下型地震に対しても、日頃からの災害対応訓練等の備えが最重要であると考えられます。本町においては、令和7年度にすべての消防団へ救助資機材搭載型の消防ポンプ車両の整備が完了しました。本年度は引き続き、3回目となる救助資機材を用いた大規模災害訓練を消防団と連携して実施し、着実な地域防災力の向上に努めてまいります。
本年3月、新たに「第1次葉山町消防計画」を策定します。この計画は、消防本部における最上位計画となり、消防業務の基本的な考え方や将来目指すべき姿を示すものです。今後も消防団や関係団体、関係機関と連携しながら、この計画に定めた「安心と安全が感じられる消防力のあるまち」の実現に向けて取組んでまいります。
続いて、総務部所管の主な事業についてご説明申し上げます。人口減少が全国的な課題となりつつありますが、各自治体における人材確保においても、新たな取組みが必要な時代となってまいりました。本町では、幸いにも町が持つポテンシャルにも助けられ、採用はかろうじて順調ではありますが、さらなる人材確保への対策として、本年度は従来からの公務員専用の求人サイトに加え、本町で働く魅力を伝えられるよう動画等によるPRの強化や採用事務の簡素化が図れる、公務員に特化した採用プラットフォームも活用し、安定した採用活動を実施してまいります。
コロナ禍以降、社会におけるDXへの取組みは顕著であり、本町でも令和5年10月に「葉山町DX推進基本方針」を策定し、さまざまな分野で取組んでまいりましたが、本年度からは、職員による「生成AI」の活用に取組んでまいります。これは、令和7年度における試行的な取組みを踏まえ、神奈川県の共同調達による本格導入を行うものです。
防災行政無線につきましては、MCA無線帯の廃止に伴い、更新の準備を進めておりますが、昨年に実施したさまざまな検討結果を踏まえ、本年度から実施設計業務に入り、令和11年度当初からの運用を目指してまいります。
災害時避難体制の充実に向けた取組みでは、現行7か所の指定避難所に加え、要配慮者の避難生活に大きく貢献していただける福祉避難所の拡大に努めております。これまで6か所の民間施設にご協力いただけることとなっておりますが、本年度はさらに10 か所に増やすことを目指すとともに、各施設に必要な資機材を配備してまいります。
災害時の応急給水対策として、これまではトラックに積載した給水バルーンが避難所を巡回することを想定してきましたが、安定した給水と衛生的な水管理の観点から、町内各指定避難所に組立式給水タンクを備蓄してまいります。これにより、神奈川県企業庁鎌倉水道営業所からの巡回給水車の水を受け入れることができ、安定した給水体制を確保することが可能となります。
町内の自主防災組織の活動が活発に行われることは、共助の観点からも大変重要であり、町としても必要な支援を行っているところですが、今般の物価高騰を踏まえ、視察に要するバス借上料の高騰に対応するため、補助額を増額してまいります。
また、災害対策として、がけ地防災対策工事への補助制度を設けておりますが、施工を検討している方にとっては、多額の経費を要する大規模な工事であることから、さまざまな疑問や不安が伴います。これまでは、防災安全課窓口において事務的な助言や支援等を行ってまいりましたが、がけ地に関する認識や疑問・不安を解消するため、専門家による相談会を実施することといたします。防災対策工事を検討する方にとって、心強い支援が得られるものと期待しております。
次に、都市経済部所管の主な事業についてご説明申し上げます。まちづくり条例につきましては、これまで開発事業の指導や地域まちづくりの推進など、一定の成果があったものと認識しておりますが、まもなく施行から25年を迎えることから、これまでの取組みの振返りを行います。昨今の開発事例を検証しながら、より良いまちづくりと調和のとれた街並みを形成していくための条例の補強や見直しの調査・研究に取組みます。あわせて、地域ごとの特色を生かしたまちづくりを推進するため、地区計画をはじめとする地域まちづくりの取組みを推進します。引き続き住民の皆様へまちづくり関連法令の普及・啓発を図り、その内容と意義の浸透を図ることで、地域との協働による都市計画の実現を目指してまいります。
災害に強いまちづくりを推進する観点から、主要な国県道沿いをはじめとする木造建築物の耐震化やブロック塀の撤去に引き続き取組むとともに、緊急車両の通行や避難路の確保を図り、災害に強く、安全で快適な住環境の形成を目指して、道路幅員が4メートル未満の、いわゆる「狭あい道路」の解消に向け、狭あい道路拡幅整備事業に取組んでまいります。
すべての子供や保護者が安心して楽しめる空間として、本年2月、南郷上ノ山公園のインクルーシブ広場が完成いたします。今後も、既存遊具の整備や新たな広場の調査・検討を進め、より快適な利用環境の提供に努めてまいります。また、町内各所の公園につきましても、地域の方々の意向を参考にしながら、計画的に整備を進めてまいります。
都市交通網及び災害時の避難路としての役割を担う都市計画道路につきましては、引き続き、向原森戸線の整備を行ってまいります。また、安全に道路や橋りょうをご利用いただけるよう、日々のパト ロール等により安全確認を行うとともに、長期間にわたり維持でき るよう、計画的に修繕等を実施してまいります。あわせて、台風や風水害などによる土砂流出等の被害を未然に防ぐため、下山川支流である観音川の測量を実施いたします。また、老朽化による支柱倒壊などを未然に防ぐため、上山口・木古庭方面の街路灯の点検を実施してまいります。なお、神奈川県の無電柱化計画を背景に、無電柱化の実現に向け協議・検討を継続してまいります。
一次産業支援では、農作物を鳥獣から守るため、防護ネット等の購入費補助及び資源循環型農業を推進することを目的に、町内の肥育農家が製造した家畜ふん堆肥の購入費補助を引き続き実施いたします。また、近年の夏季の猛暑に伴う苗枯れ等を防ぐため、遮光ネ ット等の購入費に対する補助を創設します。なお、新たな特産品の創出、6次産業化の支援につきましては、農協や漁協、商工会や観光協会等と検討を進めてまいります。
漁業におきましては、葉山町沿岸でも急速に進んでいる磯焼け対策について、町内沿岸において藻場の保全活動を行っている団体や県等と連携を図りながら、対策を継続してまいります。
住宅リフォーム資金助成事業は、町民のみならず、リフォームを受注する町内事業者の皆様からも好評をいただいております。地域経済の活性化及び住環境の向上を目的に、引き続き実施してまいります。
夏の海においては、すべての人が海水浴場を楽しむことができるよう、砂浜をベビーカーや車いすで移動可能とするマットの購入に対する補助を継続して実施いたします。そして、多くの町民の方や観光客の皆様に楽しみにしていただいている海岸花火につきましては、昨年より新たな形で再スタートし、おかげさまでご好評をいただきました。本年度につきましては、実行委員会で協議を重ね、打ち上げ場所やプログラムの変更等を検討し、「町民の皆様が楽しめる海岸花火」を中心に、より良い花火イベントを目指してまいります。
次に、環境部所管の主な事業についてご説明申し上げます。良好な自然環境の保全は、町民の快適な暮らしを維持していくうえで重要な課題の一つです。緑被率70%を超える本町の地勢を踏まえると、緑を単に保全するだけでなく、適正に維持管理していく必要があります。町有緑地につきましては、令和7年度からドローンを活用した調査を導入し、伐採の必要性や優先順位付けを行い、計画的かつ効率的な維持管理を行うこととしています。また、それ以外の土地につきましても、倒木や崩落の恐れがないか調査を行い、補助制度を活用するなどして、リスク排除に向けた対応を管理者にお願いしてまいります。さらに、民間企業が所有する広大な土地について、将来にわたり保全・活用していくことを目的として、具体的な管理・所有のあり方について神奈川県を交えて協議してまいります。
二子山山系に生息するイノシシにつきましては、その撲滅を目指し、葉山町鳥獣被害対策実施隊による捕獲活動を継続しており、昨年度の捕獲数は、本年1月末現在で99 頭に及んでおります。しかしながら、生息域は二子山山系から分散し、他地域へと拡大している状況にあります。さらなる捕獲圧を高める必要があることから、令和7年度からは民間委託による捕獲も並行して実施しています。中心的な役割を担う鳥獣被害対策実施隊では、隊員の高齢化や解体時の排水対策、暑さ対策など、環境整備に関する課題が生じています。町と実施隊との間で課題を共有し、共に解決を図っていくため、本年4月からは、町環境課に専門員を配置し、連携を強化してまいります。
本町は、県内市町村の中でも有数の犬の飼育率を示すなど、ペット愛好家の多い地域となっています。その一方で、ふんの放置や公共の場でのノーリードなど、飼い主のマナーに関する課題も生じています。また、各地で頻発する風水害や、今後予測される大規模地震が発生した場合のペット同行避難のあり方についても、受け入れる側、ペットを家族の一員と考える側の双方において、解決すべき課題が残されています。
これらの課題に対応するため、本町では、ペット防災セミナー&座談会やペットを考える会、昨年は葉山町ねこ会議を実施し、マナー向上や災害に備えた心構えに関する啓発に努めてまいりました。また、本年1月には、町議会議員主催によるペット災害危機管理士の講習及び試験を実施し、受け入れる側の知識・技術の習得を図りました。本年度は、新たな試みとして、ふんの放置による衛生上の問題解決の一助とするため、犬の散歩が多い海岸沿いの地域を中心に、犬のうんち回収ボックスを設置してまいります。
また、いけがき設置及びそれに付随するブロック塀撤去に対する助成につきましては、ここ数年の利用状況を踏まえ、時勢に即した制度への見直しを行ってまいります。
下水道事業は、平成4年2月に都市計画決定し、事業を開始してから、本年で34年が経過します。平成27年度に策定した「葉山町汚水処理施設整備構想(アクションプラン)」に基づき進めてきた市街化区域513haの整備は、本年3月で概ね完了し、今後は面整備から持続可能な事業運営の段階へと移行します。本町においても人口減少局面に入ったことにより、処理区域面積の増大に比例して増加してきた処理区域人口は、今後減少していくことが予想されます。また、浄化センター及び中継ポンプ場の老朽化や、物価高騰に伴う維持管理経費の増大も見込まれます。これらの状況を踏まえ、安定的な下水道事業運営を図るため、本年4月から下水道使用料の引き上げをさせていただくこととしました。あわせて、効率的な事業運営を進め、利用者負担の軽減を図るため、官民連携手法であるウォーターPPP方式を、本年4月から管渠施設に、令和9年4月からは浄化センター及び中継ポンプ場施設に採用し、引き続き、適切な施設維持管理と良好な水環境の維持に努めてまいります。
次に、町内3か所の汚水処理場(東伏見台、パーク・ド・葉山四季、シーライフパーク)につきましては、その用途を廃止し、本年4月から公共下水道による処理に切り替わります。これに伴い、不用となる所有施設の解体や所有敷地の活用方法について検討を進めてまいりますが、それぞれの地域の状況や背景が異なることから、個別に議論を進めてまいります。
アクションプランでは、市街化区域の10年概成にあわせて、市街化調整区域においても、時限措置として補助制度を拡充し、合併処理浄化槽の設置を促進してきました。引き続き、未整備世帯に対する理解促進に努めてまいります。
最後に、政策財政部所管の主な事業について申し上げます。町制施行100周年を大いに盛り上げていただいたミューシー(Myusy)には、昨年7月1日に改めて「葉山町PR大使」に就任していただきました。引き続き、町主催イベントへの参加をはじめ、各種 SNSや印刷物等を通じた活動を支援してまいります。また、平成25年度より神奈川県広報コンクールにおいては、まさに上位常連となっている葉山町広報ですが、令和7年度では9度目の県最優秀賞を受賞しました。政策課担当者の広報技術の研鑽、粘り強く細やかな取材活動を継続してきた大きな成果と認識しています。取材にご協力いただきました町民の皆様をはじめとして、広報制作関係各位には深く感謝を表するともに、実際の発行業務を担ってきた担当者及び所属課の協力職員全てに敬意とお祝いを申し上げます。これからも町民の皆様が町を知り、町を考え行動する貴重な情報源として、紙面・デジタルなどさまざまな媒体で「情報」を提供・交換することに努め、継続的かつ積極的な町の内外へのPRに努めてまいります。
町内会・自治会は、地域の安全・安心の確保に向け、防犯や防災活動を通じた顔の見える関係づくり、住民同士の交流促進、細かな生活課題の解決、さらには町の各種施策へのご協力など、地域社会において極めて重要な役割を担っています。町の重要なステークホルダーである町内会・自治会活動を支援するため、補助金単価の引き上げを行い、地域活動の活性化とともに、加入率の向上や担い手不足の緩和が図られるよう、さまざまな方策をともに検討しつつ、地域力の維持向上を支援してまいります。
財源確保の取組みとして改善を進めてまいりましたふるさと納税は、令和7年末までの寄附額は1億4,000万円となる見込みとなりました。今後の公共施設の建替えや維持補修にかかる莫大な財源を寄附に頼ることも視野に、さまざまな打ち出し方を検討してまいります。
そして、令和9年4月からの行政組織の見直し、機構改革に向けては、生産年齢人口の減少に伴う税収の減少や社会保障関連経費の増大、学校再整備等の公共施設再編に係る財源確保等、多くの課題に対して、限られた職員数でも対応できる組織のあり方について、全庁的に意見を交わし、情報を収集し、より良い町役場組織をつくるべく検討を進めてまいります。
さて、本年1月、人口減少により深刻化する人材の不足や偏在等に対応し、行政サービスを維持していくため、国・都道府県・市町村の役割分担や大都市の行政体制のあり方等について調査審議を進めるとして、第34次地方制度調査会が発足しました。人口減少が進む地方の市町村を中心に、公務員のなり手不足が顕在化しています。全国の町村と交流する中で、この課題は採用不足に加え、転職による人材流出も含め、頻繁に意見交換の話題にのぼります。こうした背景のもと、地方制度調査会では、これまで政府が推進してきた地方分権の流れを踏まえつつ、今後は事務や権限を都道府県に返納する議論も扱われるとされていますが、実態はすでに待ったなしの状況にあると認識しています。
葉山町におきましては幸いにも、と前述しましたが、ここ数年、土木技術職などの専門職につきましては、本町においても募集がかなわないこともあるとともに、職種を問わず転職者も年間数人いることから、今後の役場機能の維持において、決して他人事ではないとの強い緊張感を持っています。
私たち基礎自治体は、行政の最前線において、最も住民に寄り添う組織であることが本質です。しかし、時代の急激な変化に対応し、しなやかに、かつ力強く、着実に改革を進めなければ、疲弊は増し、財政の悪化を招き、業務継続が困難となり、その不利益はすべて住民生活に影響として表れます。
本年度から随時策定する公共施設の個別計画、また令和9年度に予定する機構改革は、これからの葉山町の姿と役場のあり方を同時に議論し、方向性を定める極めて重要なターニングポイントです。
外部連携として民間の知恵や活力を取入れ、行政の広域連携といった水平連携を展開することは、もはや当然の時代となりましたが、今後は国や県との垂直連携も含め、立体的に改革を進めながら地方自治を推進していく必要があります。今後は、「広域や圏域で共同化すること」と「基礎自治体が果たすべきこと」の役割の方向性を明確にし、真に必要なサービスを見極め、重点化していく判断が随所で求められるでしょう。
さて、昨今の葉山町では、子どもの出生数が減少する一方で、50代から60代を中心とした移住が進み、世帯数は横ばいで推移しながらも、人口は緩やかな減少局面に入っています。地価の上昇や別荘利用、二地域居住といった新たな住まい方も広がり、町の姿は静かに、しかし確実に変化しています。
こうした変化は、葉山町の魅力が広く認識されている証です。しかしながら、古くから人々を惹きつけてきた葉山の魅力は、ここに住み、関わり、ともに守り育ててきた人々の営みによって、土地や地域社会の姿として形づくられてきました。その価値は、一時的な利便性や表面的な豊かさを求める消費のためのものではなく、次の世代へ確実に手渡していくべき普遍的なものであり、変わらない葉山の魅力を守ることこそが、今を生きる私たちの責任です。
そのためにも、第五次総合計画の三つの大きな柱の一つである「連継」は、政策実現の基盤であり、かけがえのない資源です。町を維持し発展させていく仲間として、消費者や参加者にとどまらず、主体的に関わる「連継」の参画者を町内外に増やしていかなければならないと強く感じています。
行政として、そのために何ができるのか、そして住民に対してどのような施設、組織、サービスによって寄り添うべきなのか。町内会・自治会のような地域の担い手や公共サービスのあり方についても、従来の枠にとらわれず、しなやかに、かつ慎重に議論していく必要があります。第五次総合計画の基本理念である「自分らしく、つながるまち」のもと、100年の葉山が積み重ねてきた品格を礎に、132年目を迎える御用邸の町として、住む幸せとウェルビーイングを実感できる町として、町民の皆様の暮らしを支え、その価値を守る行政の姿勢を示してまいります。
時代は、前例のない変革が求められる局面を迎えています。変化から目を背けず、過去に縛られることなく、広く未来志向の知見と意見を集めながら、迎合することのない信念に基づいて決断する、責任あるリーダーシップを発揮することが、政治に求められています。重責ではありますが、議会の皆様とともに邁進し、この町を守り抜いていく決意です。
議員の皆様におかれましては、令和8年度予算案並びに関係議案につきまして、ご賛同賜りますようお願い申し上げますとともに、引き続き、ともに町を導く先駆者として、ご指導ご鞭撻を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。
- 町長施政方針は、下記からダウンロードできます。
過去の施政方針等は下記よりご覧ください。
更新日:2026年02月18日








