令和7年度町長施政方針

令和7年度(2025年度)町長施政方針

令和7年度予算案の提出にあたりまして、施政方針を申し述べる機会をいただき、ありがとうございます。本年は、年末から穏やかな晴天の日が続き、大きな災害に見舞われることなく新年を迎えることができました。昨年を振り返りますと、年始の能登半島地震や、8月に震度6弱を記録した宮崎県の日向灘地震、それに連動する南海トラフ地震臨時情報の発表、そして翌日には神奈川県西部を震源とする震度5弱の地震が発生し、県内の行政機関は非常に強い緊張感を持った夏でした。また他にも能登半島を含め、豪雨被害も多数発生し、台風10号では、二宮町など湘南や県西、県央の地域にも被害がありました。

亡くなられた方々のご冥福をお祈り申し上げますとともに、今もなお災害の影響を受けられている皆様に、心よりお見舞いを申し上 げます。

災害が頻発する脅威の背景にある地球温暖化等の気候変動は確実に進んでおり、5年後の2030年を目標年としているSDGsの世界的理念の下、環境分野を中心に、より多くの目標達成を目指し、平均気温の上昇1.5℃以内などの世界目標の達成に貢献しなければいけません。

しかし、GDPや軍事力において世界第一位の大国アメリカ合衆国が、保護貿易主義の拡大、パリ協定からの離脱など、自国第一主義を掲げる政治選択をしました。このような独善的な態度が他国に広がりを見せると、それによる国際協調関係の不安定化、国際秩序の分断・崩壊につながりかねません。ロシアのウクライナ侵攻や中東情勢の悪化が世界的な燃料費の高騰や物価高などにつながるように、物や人々の移動がボーダーレスになり、ICTにより情報が瞬時に伝わる時代では、遠い世界の動向の影響が、市民生活へ極めて速く現れます。それにより国民一人ひとりの暮らしへの影響や格差の拡大が起きることで、社会心理の不安定化を招く危険性があります。他者への気遣い、協力や信頼、そして気候変動を抑制する地球環境への配慮行動など、すべてが葉山町の誇れる大切な強みですが、このような市民性はどこにでもあるものではありません。維持するためには、一般的には人々の暮らしにおける身体的・心理的安全性が担保されていることが重要です。明日への不安は、進展した人間社会がより高みを目指そうと努力する意識・行動の機会を失わせることにつながりかねません。

一方で、日本の社会動向は、近年、ICTの浸透により、SNSを通じて、共通の趣味や好みを持つ個人同士がつながり、個人の発信力が強まっています。これにより、地域住民のつながりが希薄化し、地縁組織の加入者の減少や役員のなり手不足など、顔の見える関係であった大切な組織が弱体化していることが課題として認識されています。

それは葉山町においても例外ではなく、他にも葉山の風土や慣習、文化を培って来られた方々が、高齢化や転出により減少したことで、長年にわたり継承されてきた行事などの運営が難しくなり、休止や中止を余儀なくされ、それにより人々の集まる機会が徐々に失われている事態も生じています。幸いにも葉山町は、その土地の持つ魅力、商店や企業の努力、町民の皆様のおもてなしの魅力がテレビ番組や新聞、雑誌、SNSなどに取り上げられ、高い評価をいただいていますが、知名度が上がっても、一時的に来町していただくだけでは町の持続性は担保されません。土地の力に人々が癒され、穏やかに緩やかにつながり、御用邸の町として、安全に安心して過ごせる町の真価を守るべく、主体的なまちづくりの担い手が継承されなければいけません。第五次総合計画の三つの大きな柱の一つ、「連継」は政策実現の基盤であり資源です。町を維持する仲間として、消費者や参加者だけではなく、ときには関係人口として内外に「連継」の参画者を増やしていかなければならないと強く感じています。

いまの葉山の良さを決して一時の消費財として利用し消耗することのないよう、長く培われてきた100年の歴史の真価を受け継いで、葉山の強みをさらに伸ばし、葉山を愛する皆様が大きな舞台の中で引き続き安全に安心して活躍できるよう、暮らしを支え、価値を守る行政の姿勢を示してまいりたいと思います。

 

そこで、その舞台作りでもあり、葉山の真価を守るための一手として、本年は二つの課題に挑戦します。一つ目は、葉山の住環境に適合するよう導く民泊対策です。民泊は、宿泊施設の少ない葉山町において有効な資源と考えられますが、前提として地域の住環境を理解し、地域からも理解の得られる事業運営を行っていただかなければなりません。そこで、民泊事業に葉山町行政としては直接的な権限はありませんが、葉山町の向き合い方を町独自に検討し、一定のルールや指針を内外に示したいと考えています。レスポンシブルツーリズムという言葉で表現されるように、葉山を観光する方や葉山でおもてなしをする方々双方に、守るべき葉山の良さと、マナーやモラルを相互に理解できるような取組みを進め、住環境の向上とさらなる葉山町の価値向上を目指し、葉山らしい民泊事業が展開されるよう挑戦してまいります。

二つ目は、将来へ持続可能な社会の実現に向けた配慮行動を広く求め、それに賛同する人々が集う環境の町としての、はやまエシカルアクションの新しい挑戦です。令和4年6月にスタートしたはやまエシカルアクションは、これまでにオーガニック調味料を 100%使用するエシカル給食や、はやまエシカルパートナーとのオフ会、エシカルな事業者を表彰するはやまエシカルアワードを開催する等、着実な浸透を図ってまいりました。本年度は、葉山町の高い意識を内外に具体的に伝え、行動変容を促すべく、飲食店の皆様や賛同事業者の皆様を中心に、マイタンブラーの普及により使い捨て容器の削減を図る地域キャンペーンの展開を予定しています。

なお、環境問題は、生活や未来に直結する重要なテーマであり、人や地域が一丸となって取り組むことが求められています。葉山町では、ごみの資源化・減量化に取り組み、3月からは28種類目となる生ごみの分別収集を開始しますが、この機会に「環境フェス」を開催し、SDGsの理念の下、町民の皆様に向けて環境保護や保全、配慮型の行動変容を啓発し、さまざまな具体的行動を促せるよう挑戦してまいります。

これら二つの挑戦は、参画する人々の力をお借りしながら、葉山の暮らしを支え、葉山の価値を守るという意志の象徴として明確に示し、実践してまいります。

 

さて、ここで令和7年度予算の前提となる財政状況と予算編成方針について申し上げます。歳入の根幹をなす町税は、好調な企業収益や賃上げによる増収を見込む一方で、町税の増収により地方交付税は抑制されることから、一般財源総額の大幅な上昇は見込めない状況です。一方で歳出は、円安基調による原油・原材料費の上昇による物価高騰や労務費の上昇の影響があるほか、増加が見込まれる社会保障関係経費や、多額な負担が見込まれる公共施設の老朽化対策経費等、財政需要は引き続き増えていくことが見込まれます。

令和7年度予算では、町税が平成10年度以来の61億円台を見込みましたが、物価高騰や賃上げ、扶助費等の増加によって各事業経費は増加するため、今後の財政見通しが依然として厳しいことに変わりはありません。そこで、予算編成には、昨年夏に行った「サマーレビュー」の結果・指摘を踏まえ、強い緊張感をもって臨み、限られた財源を真に必要な分野に重点的かつ効率的に配分することとしたうえで、暮らしに密着した予算編成に重点を置きました。

なお、持続可能な町政運営を行うことができるよう、中長期的な収支見通しを立て、計画的な財政運営を行う姿勢は変わりません。大規模な財政支出を必要とする今にあっても、可能な限り将来世代に負担を先送りせず、緊張感をもって健全財政の維持に努めることを基本としています。

 

それでは重点項目として抽出した主な事業を先にご説明申し上げます。

増加傾向にある不登校児童生徒を重点的に支援するため、すべての小中学校に設置されているリソースルームを「校内教育支援センター」として対応を図ってまいります。これまでは、不登校の未然防止、学校内の居場所確保及び学校への復帰を中心に取り組んできましたが、今後は、同センターにおいて必要に応じて学習活動が進められるよう、教員免許を持つ専門的な相談員を配置し、学習活動への取組みを評価に反映できる仕組みを整備していきます。また、教室と校内教育支援センターをオンラインでつなぐことで、校内や自宅を含めて児童生徒が遠隔で授業を受けられる環境を構築し、リアルタイムでの学びを保障します。また、オルタナティブスクールやフリースクール的な地域の活動団体とも連携を強め、自宅や地域においても、町内のすべての児童生徒が自分らしい学びを続けられるよう、町全体でサポートしてまいります。

次に、令和4年3月に発表した保有・保全の方針を元に、本年6月には公共施設再整備の方向性をまとめた「(仮称)葉山町公共施設等将来構想」を発表し、学校施設や老朽化した公共施設等の総合的な配置について、基本的な方向性を明らかにしてまいります。

各施設の個別方針の確定まで議論を行いますが、具体的な施設の姿については広く議会や町民の皆様との議論を必要とするため、皆様のお力をいただきながら検討を続け、将来の施設更新の設計・施工までつなげたいと考えております。莫大な経費を費やす決定は、葉山町財政へ将来にわたって大きな負担となります。今の私たちの決断が、将来の葉山町民に感謝されることはあっても、決して非難されることのないよう、責任と覚悟を持って慎重にファシリティ・ マネジメントを進めてまいります。

さて、本年上半期最大の取組みは、町民の皆様と協働で循環型社会形成の一端を担う環境配慮の重要な施策、生ごみ資源化処理施設の竣工と稼働です。令和4年度から本格的に工事を進めてまいりましたクリーンセンターの再整備工事については、生ごみ資源化処理施設の建設工事完了が予定より遅れており、高騰している各費用等、施工事業者との協議を早急にまとめなければなりません。また、工期延長による逗子市・鎌倉市の皆様へのご心配を取り除くべく、葉山町の誠意もしっかりとお示ししてまいります。

一方、町民の皆様におかれましては、本年3月から予定通り生ごみを週2回、燃やすごみを週1回収集として分別収集を始めます。分別の種類が一つ増えることと、燃やすごみ削減へのひと手間が定着するまで、少なからず不安や煩わしさを感じる方がいらっしゃることも認識しており、一軒一軒を見守るつもりで、できうる限りの支援をしてまいりたいと考えております。

下水道事業につきましては、平成28年度に策定した10年概成 「アクションプラン」が本年度末を持ちまして最終年度となります。本年度は、東伏見台、パーク・ド・葉山四季及びシーライフパーク3団地の大型合併処理浄化槽区域の公共下水道処理を開始する予定です。なお、引き続き私道部分の未整備区域の整備を進めてまいりますが、町内の市街化区域につきましては、概ね完成するところです。

次に、長期的に健全な下水道経営を目的として、下水道使用料の改定に取り組み、安定した下水道サービスの提供に努めてまいります。民間活力の活用・官民連携手法(PPP/PFI)の推進といたしましては、ウォーターPPP方式を積極的に導入します。

管路施設を対象に「管理更新一体マネジメント方式」を、処理場・ポンプ場等を対象に「コンセッション方式」を導入し、下水道インフラの維持管理費を軽減しながら、国の先進モデルとして着実な管理と継続性が担保されるよう努めてまいります。循環型社会への貢献といたしまして、下水処理の過程で発生する資源の有効利用、グリーン電力の継続的な調達及び省エネ機器の導入等に努めてまいります。

次に、公共交通についてです。鉄道駅のない葉山町にとっては、通勤、通学、通院、買い物等の移動に際して、路線バスやタクシーが果たす役割は大変重要ですが、昨年は、いわゆる交通の2024年問題により、多くの路線で減便となり、町民生活に大きな打撃となりました。困惑する利用者の声をバス事業者にお届けすることで、一定の増便にこぎつけることはできましたが、依然として暮らしにご不便を強いられているという声が届いています。これらの状況を少しでも改善するため、令和6年度は公有地等へのシェアサイクルステーションの設置、高齢者の外出を応援するためのおでかけタクシー券の交付、デマンド型乗合形式の「はやまるタクシー」の実証運行を開始しました。課題や要望も多く見られましたが、本年度は、はやまるタクシーの運行車両を1台増やし、1日も早い本格運行を目指して引き続き実証運行を継続することといたします。その他の面においても、福祉的要素も重視しながら、将来にわたって持続可能な公共交通の仕組みを構築していくため、本年3月に策定する地域公共交通計画に則って、交通事業者をはじめ関係機関と連携を図りつつ、交通課題に向き合ってまいります。

 

さて、ここからは既存事業も含め、葉山町行政機構各部における主な事業をご説明申し上げます。

はじめに、教育委員会所管の主な事業についてですが、第五次総合計画の三つの大きな柱の一つ、「楽校」のもと、令和7年度は、葉山町の教育振興基本計画である「葉山町教育ビジョン」をスタートさせる年度となります。4月からは南郷中学校区で施設分離型小中一貫校がスタートし、令和8年度には葉山中学校区が続きます。小中一貫校においては、新しい時代に必要な資質・能力を育む、9年間の系統的な学びを更に進めます。また、地域全体で子どもたちの学びと成長を支えるため、地域と学校が連携・協働して活動を行う地域学校協働本部の設置等、推進体制の強化を図ってまいります。

学校備品につきましては、5年前のコロナ禍対策として全校に配備したタブレットは、新しい教育には欠かせない学習ツールとなっていますが、令和8年度にはすべてのタブレットを最新のものに更新します。今後は、回線の増強等も視野に入れながら、より探究的な学びに生かせるよう、計画配備を進めてまいります。100周年を契機に部活動支援として中学校に楽器購入を進めましたが、本年度も葉山の文化の原点として、中学校の新規楽器購入を進めてまいります。

スポーツの振興につきましては、助成金を活用しながら、葉山町総合型地域スポーツクラブ「うぇるま」の活動が活発化し、自立ができるよう引き続き支援をしてまいります。草津町とのスポーツ交流につきましては、長年、夏の海水浴と冬のスキー学校で官民合同の相互交流を図ってまいりましたが、近年の夏の酷暑による安全対策や宿泊所の課題から、さまざまなマリンスポーツのメニューをそろえることや、大型バスのような団体行動ではなく、家族や小規模単位でも参加できるよう時期やプランを再検討し、交流のさらなる発展と充実を目指してまいります。

 

次に第五次総合計画の三つの大きな柱の一つ、「健幸」の中心となる福祉部所管の主な事業についてご説明申し上げます。

魅力ある子育て環境の充実に、乳幼児健康診査に新たに1か月健診を導入することで、出産からの切れ目のない健診の実施体制を整備するとともに、費用の一部助成により保護者の負担軽減を図ります。また、安全安心な出産を迎えられるよう、妊娠中の口腔環境の変化による歯周病及びむし歯の進行予防、歯周病による早産・低体重児出産のリスク低減を図るため、妊婦の歯科健康診査を受診者負担なしで実施します。次に、子育て世帯訪問支援事業を行います。これは家庭環境や養育環境を整え、虐待リスク等の高まりを未然に防ぐため、家事や子育て等に対して不安や負担を抱えた子育て家庭、妊産婦、ヤングケアラー等がいる世帯を対象として、一定の要件を備えた訪問支援員が不安や悩みを傾聴するとともに、家事や養育に係る援助や必要な支援を行うものです。

高齢介護分野においては、「高齢者福祉計画・介護保険事業計画」に位置付けられている「看護小規模多機能型居宅介護事業所」の整備を目指して補助事業を行います。医療依存度の高い方への柔軟な看護と介護の連携による支援を行うことにより、可能な限り住み慣れた自宅や地域での生活を継続できるまちづくりを進めてまいります。また、少子高齢化や核家族化、平均寿命の延伸などによりひとり暮らし高齢者が増加する中で、老後への不安感が増していることから、終活サポート事業を新規に行います。誰もがいつまでも住み慣れた地域で、安心して生活が送れるよう、元気なうちに今後の人生について考え準備する、いわゆる終活の取組みに対する支援を行ってまいります。

人材不足は多くの業種において危惧されていますが、無くてはならない介護人材の確保に向けて、介護事業所の職員を対象としたキャリアアップのための研修会を開催し、資質の向上、参加者同士の関係づくりを目指すとともに、介護人材の離職防止・定着促進に向けた取組みを推進してまいります。

障害のある方が地域で安全で安心な暮らしを送るために必要な社会資源や公的制度を紹介する冊子「障害児者のための制度案内」について、音声版制度案内を作成してまいります。視覚による情報収集が困難な方のために、町ホームページに音声版を掲載するとともに、デジタル録音図書いわゆるDAISY(デイジー)図書を作成し、情報の取得や意思疎通のための手段の確保に向けた取組みを積極的に推進してまいります。

新たな取組みとして、40歳未満のがん患者が、住み慣れた自宅で安心して自分らしい生活が送れるよう、在宅生活に必要な経費の一部に対する助成制度を創設します。また、骨髄等移植の推進を図るため、骨髄等を提供したドナー及びドナーが勤務する事業所に対し、通院・入院日数に応じた助成制度、骨髄ドナー支援事業を始めます。 本年4月から定期接種化される帯状疱疹ワクチン予防接種につきましては、発症や重症化の予防、経済的負担の軽減を図るため、原則65歳の方と、経過措置として70歳から5 歳刻みの年齢の方、100歳以上の高齢者を対象に接種費用の助成を行います。

次に、消防本部所管の主な事業についてご説明申し上げます。持続可能な消防・救急・防災体制の確保として、令和6年度及び7年度の2か年継続事業の消防救急デジタル無線システムの更新を行っております。本町に大規模災害が発生した際、このシステムにより全国からの緊急消防援助隊との連絡ツールとして、無線の連絡体制強化を図り、適正な情報連携による受援体制を構築することが可能になります。

また、地域防災力の更なる向上を目指し、車両整備計画を前倒しし令和7年度は第5分団及び第6分団に救助資機材搭載型ポンプ車両を整備します。これにより各消防団すべての車両が更新されることとなります。また、車両に搭載した救助資機材を活用し、昨年度に引き続き神奈川県消防学校内に整備された災害訓練施設において、消防団員と消防職員による災害に特化した合同訓練を継続して実施します。

本年度より、機能別消防団の活動をスタートします。活動内容としましては、発生が懸念される大規模災害時の基本団員の後方支援や新規入団者確保のための広報活動、地域防災力の裾野拡大を目的とした救急救命処置の知識習得者増加支援、災害発生後の避難者の誘導や避難所運営支援等を担います。

 

続いて、総務部所管の主な事業についてご説明申し上げます。

本町の防災行政無線は、平成26年から800MHz帯デジタルMCA 通信システムを採用し運用を図ってまいりましたが、令和11年5月をもってMCA通信のサービスが終了することから、本町の次期防災行政無線システムを模索していく必要があります。現状の課題や本町の地形等の特性、向上した通信技術の活用等を踏まえ方向性を定めてまいります。

次に、三浦半島4市1町においては、日頃より情報の共有を図り連携協議を行っておりますが、本年度、「防災キッチンカー」を民間企業とともに三浦半島の広域連携で配備し運用を図ることといたしました。運用方法の詳細は今後の協議によりますが、被災時はもとより、平時は防災関連事業等でも活用し防災意識の啓発に活用できることと期待しています。

次に、DX推進の取組みについてですが、令和5年10月に策定しました「葉山町DX推進基本方針」に則って本年度も引き続き、新たなDXへの取組みを行ってまいります。主なものとして、1点目は、現在各課窓口で公開している地図情報をインターネット上で公表する「公開型GIS」を導入し、都市計画図、道路台帳、下水道台帳、ハザードマップ等について合同で運用を図ってまいります。2点目は、ごみや資源物の分別について、スマートフォンのアプリにより確認できるシステムを導入し、わかりやすい情報提供とごみや資源物の適正分別を促進してまいります。3点目は、職員の「人事評価システム」を導入します。現在は、管理・運用が個別管理となっている「人事異動等履歴」、「研修実績等」を一元管理することで、より分かりやすい評価が可能となるとともに、人材育成や能力開発等が効果的に行えることとなります。

本年1月に、2年にわたり若手職員が中心となって研究、検討してきた書かない窓口「rakuっと窓口」がスタートいたしました。128の手続きについて、申請書等への記入を職員がタブレットで入力することで、来庁されるお客様の負担を軽減しスムーズな窓口対応が行えるようになりました。この取組みは今後順次拡大し、令和8年度末までに220手続きを目指してまいります。これにより、従来から進めているコンビニ交付のように、利用者の皆様がどこからでもスムーズに申請や諸証明の発行などが行える「来庁しないDX」の推進と併せて、ご来庁された皆様にはワンストップで必要な手続きが完了したり、もしくは生活相談等、じっくり相談したり、より手厚い役場機能が活用できる環境を構築してまいります。

同様に、債権一元管理による生活改善型納付への取組みでは、特に納付が困難となった生活困窮の方に対しては、税と各保険料の担当者が連携することで、生活を立て直す機会に寄り添ってまいります。また、必要に応じてファイナンシャルプランナーへの相談機会を設け、生活改善に向けたアドバイスを受けられるよう取り組んでまいります。

役場全ての原動力となる職員には、昨年の人事院勧告を踏まえ、本年4月から職員手当の処遇改善を予定しています。特に地域手当においては、人事院勧告では神奈川県は 12%でありながら、段階的に初年度10%が示されているところ、国の指針に先んじて本年度から12%として運用できれば、職員にとって大きな励みとなります。また、職員提案による「新しい働き方」の導入等、個々人の暮らしにマッチしたさまざまな働き方ができる職場環境を目指すことは、新たな人材確保にも有効な取組みになるものと考えます。それぞれの部署が自立しながらも、有機的に連動し、縦横に連携する葉山町役場であり続けられるよう、「笑顔と愛と挨拶」を忘れずに、町民サービス向上に一丸となって働いてまいります。

葉山町の行政拠点である葉山町役場庁舎が昭和59年に完成してから、はや40年が経過しています。経年相応の老朽化により、逐次修繕を実施しているところですが、令和6年度に取り組みました空調設備の設計に基づき、空調設備改修工事に着手することとなります。 庁舎内で行うサービスに影響させることなく改修を進めるため、2か年にわたり工事を進めてまいります。

 

次に都市経済部所管の主な事業についてご説明申し上げます。

本年度は、将来の葉山町の土地利用を見据える都市計画マスタープランの改定年となります。20年先の未来も住みやすく、愛される葉山町となるよう慎重な検討を踏まえ、着実な改定作業に取り組んでまいります。なお、地域ごとの特色のあるまちづくりを推進するため、地区計画を始めとする地域まちづくりの普及には継続的に取り組み、地域との協働による都市計画の実現を図ってまいります。また、災害に強いまちづくりを推進するため、主要国県道沿いをはじめとする木造建築物の耐震化及びブロック塀の撤去に、引き続き取り組んでまいります。

公園整備につきましては、年始には南郷上ノ山公園にインクルーシブ広場がオープンしましたが、引き続きインクルーシブ遊具設置や野球場のグラウンド整地作業を実施することで、より快適な利用環境の提供に努めてまいります。また、今後も継続的に南郷上ノ山公園や町内各所の公園の改革を続け、地域の方々との協働の取組みや、インクルーシブな観点を取り入れた遊具の整備を行います。

都市交通網・災害時の避難路としての役割を担う都市計画道路につきましては、昨年度に引き続き向原森戸線の整備を行います。道路の安全管理は、1月の埼玉県八潮市の陥没事故を受けて、引き続き安心して道路を利用していただけるよう、日々の点検やメンテナンスをさらに慎重に行うとともに、台風等自然災害や老朽化による支柱倒壊等を未然に防ぐため、昨年度実施した街路灯やカーブミラーの点検結果に基づき事前措置修繕を実施し、町道の維持保全に努めてまいります。河川につきましても、近年、激甚化してきている 風水害による河川構造物の被害を未然に防ぐため、住宅地を流れる戸根山川、前田川、桂川の三つの支流河川で現況調査を実施します。

農業振興につきましては、依然として3割の農業者が農作物の鳥獣被害を受けている現状から、農業被害防護ネット等にかかる補助制度を継続します。また、資源循環型農業推進の観点から、町内肥育農家が製造した家畜ふん堆肥の購入に係る補助制度を創設します。

水産振興につきましては、令和4年3月から強化しております密漁対策を継続して実施し、また磯焼け対策として湘南漁業協同組合葉山支所や町内沿岸において藻場の保全活動を行っている団体等と連携を図りながら対策を継続してまいります。

商工振興につきましては、地域交流拠点の中核を担うハヤマステーションの利便向上を図る支援として、キャッシュレス決済システム導入に係る経費を助成します。また、住宅リフォーム資金助成事業につきましては、利用される町民のみならず、リフォームを請け負う町内業者の皆様からもご好評をいただいており、地域経済活性化及び住環境の向上を図る観点から継続してまいります。

夏の風物詩でもある海水浴場におきましては、全ての人が海水浴を楽しむことができるよう、インクルーシブビーチの視点から、砂浜でのベビーカーや車いすの移動が可能となるマットの購入に係る補助制度として「バリアフリービーチ推進事業補助金」を創設し、海水浴場組合に対して助成いたします。

多くの皆様が楽しみにしている花火大会につきましては、交通の2024年問題により、安全で円滑な輸送環境が見込めないことから、規模を縮小し、新たな形で町民の皆様にお楽しみいただける方法での開催を検討してまいります。

老朽化が進むみそぎ橋につきましては、令和7年度から3か年で補修工事を行います。また、これまで長年、調査・検討を重ねてきました臨御橋につきましては、現在設計業務を進めていますが、設計後は遅滞なく令和8年度に工事着工し、早期の完工を目指します。

 

次に環境部所管の主な事業についてご説明申し上げます。

自然豊かな環境を守り、町民の皆様が安心して暮らせるまちづくりを目指す中で、町が所有する緑地の維持管理において、本年度は、 専門家による調査を実施し、危険度の高い樹木の特定を行うとともに災害を未然に防ぐための予防対策の森林整備を講じてまいります。

イノシシ捕獲業務におきまして、近年、二子山山系に生息するイノシシは、三ケ岡山緑地及び大楠山へと生息域を拡大し、恵まれた環境下において、多頭出産等により生息数が年々増加しています。 葉山町鳥獣被害対策実施隊により農業被害を中心に被害防止対策を進めてまいりましたが、農業被害のみならず生活被害の相談も寄せられていることから、本年度は業者委託による捕獲活動を導入し、実施隊との連携により効果的に捕獲し、散策やハイキングで利用される方々や近隣にお住いの町民の皆様が安心して暮らせる環境づくりを進めてまいります。

地球温暖化対策として、これまでも再生可能エネルギーシステム等の設置に係る補助を行ってまいりましたが、本年度は、三浦半島4市1町で連携して環境省の補助事業を活用し、町民の皆様や事業者向けに自家消費型再生可能エネルギーシステム等の設置補助を行います。

犬の登録件数が非常に多い本町において、ペットを飼っている人も飼っていない人も共生できる社会を目指し、ペット防災やペットに関する座談会、愛犬手帳のリニューアルなどの取組みを進めています。本年度は、LINEによる犬の新規登録申請、狂犬病予防注射実施届等の手続きの本格開始、ペットのマナー啓発講座を実施する等、利便性の高い手続きとペット共生社会のさらなる推進に取り組んでまいります。

最後に政策財政部所管の主な事業について、多くの事業に関連して前述しておりますため、その他の項目について申し上げます。

草津町との姉妹都市交流について、両町は昭和44年3月の締結から56年の歴史を積み重ねてきました。行政間の連携だけでなく、町民の皆様も様々に交流を行い、今や両町の絆は確固たるものとなっています。今後も両町の動向について情報交換を密に行い、柔軟に交流のあり方を変化させながらも、末永く姉妹として助け合いのお付き合いをしてまいりたく思います。

那須町と令和3年、下田市と令和4年からスタートしました御用邸友好都市の交流においては、防災協定を皮切りに今後も各行政分野において、研修等による職員間の連携強化を図ってまいります。 本年度は、関係団体や住民レベルでの交流の機会創出に向けた新たな取組みとして、町内に拠点を置くスポーツや文化活動等を行う団体が、団体同士の相互交流として友好都市を訪問し、交流・研修を行う際の経費に対して助成制度を設けることといたします。

自治体連携の強化は時代の背景もあり、相互協力によって変化に向き合おうとする必然の流れも大きいと認識しています。社会は縮減に向けて重要な局面を迎えていますが、葉山町役場におきましても、この局面に向き合うべく、組織のあり方、すなわち行政改革の議論を開始し、令和8年度末の実現を目途に進めてまいります。

また、その際、財源確保の取組みとして改善を進めてまいりましたふるさと納税も、令和6年末までの寄附額が1億円台となる見込みとなりました。引き続き有効な財源確保の手段として、さらに大きく踏み込んでまいります。

 

さて、昨年12月、古くから人々を惹きつけてやまない葉山の風土が、そこに住む人々に高く評価され、3年連続で「住み続けたい街ランキング日本一」を頂戴いたしました。一方で、姉妹都市草津町が「にっぽんの温泉100選」で22年連続日本一になっていることを踏まえると、まだまだ先は長く聞こえますが、ともに姉妹そろって 日本を代表する地域と評してもよいかと思います。

実際に、昨年11月までの一年間、全国若手町村長会を立ち上げ、その初代会長職を務めましたが、町長職の期数を重ね、他団体との情報交換の機会が増える中で、例えば災害に対する地理的な面や、居住環境、人口動態や財政状況、治安、定性的ながら市民性等において、葉山町がいかに優れた地域であるか、強く実感しています。

年末には三浦半島4市1町首長連携会議、通称「ファミリーミーティング」も設置され、三浦半島が一つになり、協力し合おうとする心強い周辺自治体に囲まれていることもその重要な要素の一つです。

そして、令和6年3月からはじまった町制施行100周年記念事業は、葉山の皆様、また、それ以外の皆様からもたくさんの「葉山愛」に触れることのできた貴重な一年でした。令和7年1月現在、様々な企画に参加された方は延べ2万5千人を超え、年度末までの企画事業総数は103件となりました。このような規模で周年記念事業が行われた事例を他には把握していません。

また、それを支える立場にありながら、その企画に参加させていただく都度、多くの感動をいただきました。皆様の活躍が素晴らしすぎて表現し切れませんが、私にとっては一生の思い出であり宝でもあります。未来の葉山に強い希望を感じました。そして役場の職員もとてもよく働き、役場内においても100周年をキーワードに様々な取組みを進めてくれました。議会の皆様も改革に常に積極的で本当に感謝しています。この機会によって、一人でも多くの方が葉山を好きになり、引き続き、いつまでも住み続けたいと思っていただけるような100年の節目になっていることを願ってやみません。

令和6年第4回定例会において可決された第五次総合計画の基本理念である、「自分らしく、つながるまち」のもと、葉山町行政は縁の下の力持ちとして、誠実に、公務の専門家として、誇りをもって働きます。そのために、内外に切れ目のない「連継」を心がけて町民の皆様の暮らしに寄り添うことで、葉山町のウェルビーイングを実現してまいります。政治は、将来の葉山町と日本の持続と幸せを視野に、広く知見と意見を聞き入れ、迎合のない信念にもとづく判断と責任のもと、決めて導くリーダーシップを発揮しなければいけません。そうして100年の葉山の品格を守り、住む幸せ、ウェルビーイングを実感できる、私たちの葉山の素晴らしさをさらに磨き守ることができると信じています。

議員の皆様におかれましては、令和7年度予算案並びに関係議案につきまして、ご賛同賜りますようお願い申し上げますとともに、引き続き、ともに町を導いていただく先駆者として、ご指導ご鞭撻 いただけますよう、なにとぞよろしくお願い申し上げます。

 

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更新日:2025年02月17日