令和6年度町長施政方針

令和6年度(2024年度)町長施政方針

令和6年度予算案の提出にあたりまして、所信及び施政方針を申し述べる機会をいただき、ありがとうございます。

令和6年度は、4期目の初年度となりますが、町制施行100周年に向けて、この大きな節目を町全体で共有し、葉山のこれまでの歴史とこれからの未来を大切にしてもらえるよう、多くの皆様と楽しみ、葉山を考え、想像し、行動に変えていきたいと願っております。

そして行政にとっては、少子化とそれに起因する人口減少の波にのまれることなく、インフラの老朽化、物価高騰、人件費の上昇などに対応するため、長期的な視点に立った展望を発信し、ときには受益者負担を求めることや大きな政治決断が必要な局面が続きます。これまで議論を重ねてきた公共施設更新の方針決定など、時代の先を読み、将来へ向けて葉山町行政が継続するため、大きな選択と決断をしなければなりません。引き続き、各方面において、町民の皆様、議員各位や多くのステークホルダーの皆様、そして役場職員の力を結集し、ともにビジョンを共有して、一人でも多くの方に愛される葉山町であるべく、葉山町長としての責務を果たす覚悟でおります。4年間、微力ながらも全力で取り組んでまいる所存ですので、なにとぞお力添えを賜りますようお願い申し上げます。

はじめに、本年1月1日に発生いたしました令和6年能登半島地震におきまして、関連の事故を含めて、お亡くなりになられた方々のご冥福をお祈りするとともに、今もなお避難生活を続け、生活再建に多大な苦労をされている皆様に心よりお見舞いを申し上げます。募金や物資供給、現地でのボランティア活動など、町職員も1月から消防職だけでなく保健師、一般事務職、技能労務職も現地へ応援に行っておりますが、行政として、また個人としてできることを行い、1日も早い復興へ協力してまいります。

さて、令和2年から昨年までは、新型コロナウイルス感染症対策に奔走する期間となりました。同感染症が5類に移行した昨年にあっても、インフルエンザが夏頃から流行し、引き続きコロナ感染の波も合わさり、感染症の脅威は今もなお続いているものと再認識しております。行政として災害時においても必要な業務を継続するため、DX推進やAIの活用などで業務の継続力強化と効率化等の改革を進めるとともに、通常時には町民の皆様の利便向上に資する手段で災害対応能力向上を推進してまいります。また、改めて在宅勤務やリモートワークを運用することにより、必ずしも職場に出勤せずに済む職員の働き方環境の整備も図ってまいります。

自然災害においては、夏の酷暑と暖冬で年間を通じた気候変動を強く感じるのは私だけではないと思います。地震、津波、風水害などの災害に向き合い、強靭な町とするためには、備えの充実と訓練の積み重ね、そして日ごろからの地域のつながり、連携を強化するなど、必要な取組みをこれまで以上に進めなければなりません。例えばこれまでの危険木伐採補助につきましては、土砂災害警戒区域又は土砂災害特別警戒区域に指定されている区域の樹木を対象としておりましたが、対象区域外であっても危険な樹木が存在することから、令和6年度の新しい取組みとして、地域の皆様のご協力をいただきながら倒木の危険性等を調査し、危険と判定され緊急対応が必要な場合には、補助の対象に加えることといたします。また、がけ地防災対策工事補助金につきましても、がけ地への直接の施工を前提としている現在の補助対象工事に加えて、がけ地からの土砂流出を防止する防護壁の設置工事も対象に加えるなど、防災力強化の取組みを進めてまいります。

本町に広がる山々は、海と並んで自然の魅力の一つではありますが、近年の大型台風や豪雨による倒木、土砂崩れ等の被害を防ぐ森林の保全が大きな課題となっております。そこで本年は、大正公園緑地において、樹木管理により災害被害を予防する森林環境づくりを目指してまいります。将来的には、葉山の山の魅力を身近に感じていただけるよう、いつでも親しめる山の整備につなげてまいります。

さて、昨年はクリーンセンターの解体工事が進み、下水道は本管敷設が概ね終了するなど、葉山町にとって長年の懸案だった大きな事業に節目をつけることができました。また、念願だった中学校給食を開始し、全ての給食にオーガニック調味料を使用するなど、エシカルなまちづくりをベースに、環境貢献や健康増進に力を入れる土台を作りました。その上で次のステージとして、本年はさらに強い意識を持って、環境貢献、サスティナブルな葉山町を構築してまいります。

今年葉山町は99歳。いよいよ100周年に向かう年です。来年の元日に100歳を迎える前祝いの今年から町全体が大いに盛り上がること、文化やスポーツ、皆様が楽しむイベントを通じて葉山のこれまでを知り、これからを想う機会に、行政はその支えとして安心感を提供しつつ仲間に入れていただき、様々な催しが行われることをとても楽しみにしております。

 

次に、令和6年度予算の前提となる財政状況と予算編成方針について申し上げます。昨年12月に国が決定した「令和6年度地方財政対策」においては、社会保障関連経費や人件費の増加が見込まれる中、地方自治体が住民のニーズに的確に応えつつ、子ども・子育て政策の強化をはじめ様々な行政課題に対応し、行政サービスを安定的に提供できるよう、地方交付税等の一般財源総額について、令和5年度を上回る額を確保するとしております。具体的には、臨時財政対策債を抑制し地方財政の健全化を図ること、また、個人住民税の定額減税による減収分については地方特例交付金により全額国費で補てんすることとしております。

本町の財政運営につきましては、世界的な脅威となった新型コロナウイルス感染症が、国及び地方自治体の財政運営に大きな影響を及ぼすものと戦々恐々と身構えておりましたが、結果的に、本町の個人住民税を中心とする町税収入に直接的な影響は見えず、むしろ令和4年度町税収入決算額はコロナ禍前を上回る水準となりました。しかし、今後続くとされる年少人口及び生産年齢人口の減少は、いわゆる現役世代の減少を意味するものであり、町税収入の減に直結する要因となりかねません。歳出面では、社会保障関連経費の増大に加え、教育施策の充実や公共施設の老朽化対策など、新たな財政需要が予測されるところです。先行きが見通せない時代にあっても持続可能な町政運営を行うことができるよう、中長期的な収支見通しを立て、計画的な財政運営を行わなければなりません。本年以降も、引き続き大規模な財政支出が見込まれますが、将来世代に負担を先送りせず、持続可能な町政運営のために緊張感をもって健全財政の維持に努めることを常に基本として、予算を編成してまいります。

 

次に、昨年末の選挙を通じて町民の方々から最も多くいただいた声が、これからの葉山の教育への期待でした。自然環境への配慮・貢献などの先進的な取組みに対する評価やご理解はあるものの、人口減少、少子化が進む本町において、人をひきつけ、定住してもらうために、将来を担う子どもたちの教育環境の向上を図るべきとのご意見がとても多く、また地域の方々もそこに協力するという大変力強い声に勇気づけられました。私自身、様々な可能性を秘めた教育カリキュラムの展開が、子どもたちがワクワクする魅力ある学びにつながり、それこそがこれからの葉山の活性の大きな一手になるものと確信しております。

令和6年度より、学校整備基本構想・基本計画の策定に入りますが、地域に開かれた未来の「楽校」(《がっこう》楽しい学校を意味する造語)の空間づくりと同時に、子どもたちの学びや大人たちの希望につながる「楽校」となることに期待を込めて、令和6年度を教育環境改革の年とし、たくさんのアイデアや夢を形にすべく必要な取組みを推進してまいります。推進にあたっては、これまでの教育委員会や学校現場任せの教育ではなく、行政としても積極的に関わりを強めることで、学校や先生方の課題や苦労を共有し、専門職として彼らが目指す学校の姿を学び、また、本年1月に連携協定を結んだ東京学芸大学の未来の学校モデルなども参考に、大学の支援もいただきながら、よりよい葉山町の公教育を実現できるよう、関係機関の協力と連携の仕組みを構築してまいります。

次に、長年の課題となっていた公共交通の課題についてです。鉄道駅のない葉山町にとっては、通勤、通学、通院、買い物などの移動に際して、路線バスが果たす役割は大変重要です。コロナ禍以降、利用者の減少と交通事業者の人手不足、また、働き方改革の一環で物流・運送ドライバーの勤務時間の上限が設定されることとなり、現行のサービス水準の維持が困難となる、いわゆる2024年問題を控え、本町の公共交通にも多大な影響が見込まれます。特に路線バスの減便は、多くの町民の生活に影響をもたらします。一方で交通事故抑制と安全確保を考え、高齢者の免許返納を推奨することから、暮らしの生命線ともいえる交通手段の確保は喫緊の課題です。

このような状況を見据えて、以前からバス・タクシーの交通事業者と協議を行っておりましたが、早急に地域公共交通の充足策を展開するべく検討を進めております。例えば、スーパーや医療機関の無料送迎車両等既存資源との連携や、新たなデマンド型交通の導入等の可能性を模索すること、またレンタサイクルのような補完策も含め網羅的に移動の足の確保を進めることで、地域交通環境の維持向上に努めます。なお、町では、将来にわたって持続可能な公共交通の仕組みを構築していくため、地域公共交通会議において計画策定の議論を深めておりますが、試行的取組みを令和6年度内に開始し、令和7年度からスタートする計画のとりまとめにつなげてまいります。また、財源確保の取組みも非常に重要であることから、様々な補助金・交付金活用の可能性を調べるとともに、ふるさと納税を財源確保の有効な手段と捉え、今まで以上に大きく踏み込みます。これらの取組みにつきましては、具体的には本年6月には政策的予算として計上し、実行につなげてまいります。

次に、下水道に関する官民連携の推進では、下水道事業を持続的に実施するため、国から示された官民連携方式、いわゆるウォーターPPPの導入検討を積極的に進め、浄化センター及び中継ポンプ場の適切な運営を図ります。国の先進モデルとして、大型インフラの維持管理経費を軽減しながら、着実な管理と継続性が担保されるように推進してまいります。

一方、令和4年度から本格的に工事を進めてきたクリーンセンター再整備工事は、令和7年2月竣工、翌3月供用開始で、逗子市との共同運営で生ごみの分別収集を開始いたします。これまで議論をしてまいりました生ごみと燃やすごみの収集方法につきましては、町内では生ごみを週2回、燃やすごみを週1回収集として、今後試行的取組みを進め、詳細な課題抽出とその解決策の検討を同時に進めてまいります。分別方法の変更にあたっては、町内全地区において住民説明会を重ねて実施するなどして、周知、啓発を行い、町民の皆様と協働で循環型社会形成の一端を担う施策として、分別排出のご協力をお願いしてまいります。

人口に対する犬の登録件数が県内で最も多い本町において、ペットを飼っている人も飼っていない人も共生できる社会を目指し、令和5年度からペット防災や、犬に関する座談会を開催し、飼い主やそうでない方々の声を直接伺う機会を設けてまいりました。令和6年度は、猫やその他のペットについても座談会などを開催し、葉山町ならではのペット共生モデル構築に取り組んでまいります。既にいただいたご意見から、まずは糞尿の放置対策のためのイエローチョーク作戦や、マナーと防災意識向上のための愛犬手帳のリニューアルなど、各課題に合わせて取組みを始めてまいります。

令和4年6月にスタートしたはやまエシカルアクションは、地球の将来のために今から何ができるのかを真剣に考え実践する町民、事業者と行政が協力し取組みを進める官民連携事業です。制度の趣旨や重要性の理解については徐々に広がりを見せ、150の事業者・団体と473人の方々から賛同をいただきました。また令和5年度は、さらに行政と連携して事業等を企画・実施するエシカルパートナー制度も開始し、すでに29の事業者・団体にご登録いただいております。昨年に引き続きエシカルシンポジウムの開催やエシカルパートナーと連携した事業などを通じて、環境配慮の町としての活動を、町内や国内にとどまらず、全世界に向けて発信してまいります。また、学校給食においても、葉山産の食材を通じて町の自然や歴史を学べるエシカル給食の取組み、オーガニック調味料100%使用を継続することで、子どもたちの健全な心身の育成とともに、エシカル活動を当然とする子どもたちの意識と学びの醸成に努めてまいります。

 

さて、ここからは既存事業も含め、第4次総合計画の四つの基本理念に沿ってご説明申し上げます。

1点目、「人を育てる葉山」につきましては、「楽校をつくろう!」を合言葉に、学校整備を核とした新しい学びとその空間づくりに係る取組みの推進に資するため、新たに楽校づくり推進事業を立ち上げ、学校整備基本構想・基本計画を令和6年度・7年度で策定してまいります。また、地域に開かれた楽校づくりを実現するため、未来の楽校空間づくり等をテーマとしたワークショップを開催いたします。併せて、町内すべての学校に設置された学校運営協議会においても、「楽校づくり」について対話を行ってまいります。

昨年、中高生議会から要望のありました校内ネットワーク環境の改善につきましては、Wi-Fiアクセスポイントを各小中学校で増設し、特別教室等においてもネットワークにアクセス可能となる環境整備を行います。学校図書室の開室時間の延長につきましては、中学校図書室の放課後の開室時間を週1日2時間延長することで、学習や仲間と本を読みながら語らう場といたします。また、議会から政策提言としてあげられた高校生奨学給付金の増額につきましては、1年生の給付金を6万円から10万円に増額することで、支出がかさむ入学時の負担軽減を図ってまいります。

次に学校教育につきましては、個別最適、探究的な学習に資するため、新たに各種教育ソフト・アプリケーションを導入してまいります。具体的には、支援が必要な児童生徒への適切なアセスメント、教材作成や教員の研さんのための特別支援教育ソフトです。誰一人取り残されることのない個別最適化された学びの実現のため、一人ひとりに応じた問題をAIが自動的に出題するデジタル教材を小学3年生から中学3年生まで導入します。体育の授業においては、動きを撮影した映像の共有・分析・コミュニケーションを行うことで、より探究的な学びへ転換できる体育授業用映像分析ツールを小学5・6年生に取り入れます。さらに中学1年生には、世界の一線で活躍する著名人等が語る動画から考えを深めていくICTサービスを導入することで、自己理解力・自己表現力の向上、他者理解・他者への寛容性を育み、生徒一人ひとりと社会との繋がりの強化を目指してまいります。

生涯学習関係につきましては、平成26年度から逗子市と協力して進めてまいりました長柄桜山古墳群第1号墳の整備工事が完了し、本年4月下旬にオープンします。オープンに伴い現地で記念式典を開催し、12月には逗子市と共催で記念講演会を開催いたします。南郷上ノ山公園につきましては、他の児童遊園と同様にインクルーシブの視点を取り入れた遊具の設置や広場等の整備を2か年にわたって推進してまいります。また、前年度に引き続き、今年度は残りのD・E・Fテニスコートの張替えを実施し、より快適なプレー環境を提供してまいります。

人権と平和の尊重につきましては、「第4次男女共同参画プランはやま」が令和6年度で計画期間が満了することに伴い、次期計画について、誰一人取り残さない社会を目指すSDGsの「ジェンダー平等の実現」を踏まえ計画名を変更するとともに、附属機関での審議や町民向けアンケート等を通じて様々なご意見をいただき、多様性を尊重し受容し合う社会づくりを目指します。

次に、子ども・子育て支援策の充実につきましては、妊産婦健康診査における受診者負担の軽減を図るため、全16回の健診のうち最も高額である初回健診に対する助成額を拡大いたします。退院直後の母子に対し心身のケアや育児サポート等を行う産後ケア事業では、利用しやすい環境を整えるため、国からの補助金を活用し、全ての産婦に対して利用者負担の減免を拡充します。また、保育所や放課後児童クラブの待機児童につきましては、令和6年度に長柄地区に開設される民間小規模保育施設1園と放課後児童クラブ2施設に対し運営費の一部を助成し、待機児童の解消を図ります。

 

2点目、「暮らしを守る葉山」につきましては、健康づくりにおける試行的な取組みとして、昨年11月に包括連携協定を締結した県立保健福祉大学の開発による未病アプリケーションを活用し、生活習慣病改善に向けた行動変容を促す特定保健指導の実施と利用率の向上を図ってまいります。また、地域福祉の充実に関しては地域社会における人のつながりを大切にし、生きづらさや不安、困りごとがある人を包括的に支えるまちづくりを目指して「第3次地域福祉推進計画」の策定を進めてまいります。

障害児者福祉の充実につきましては、手話通訳者派遣等事業において、新たな取組みとして、手話でのコミュニケーションが難しい聴覚障害者の情報保障を図るため、医療機関の受診や公的機関での手続きなど、社会生活上必要と思われる場面への要約筆記者の派遣を行います。高齢者外出支援事業では、満70歳以上の方を対象とした京急バスのふれあいパス購入費助成について、料金改定を踏まえた助成額の拡充を行い、引き続き高齢者の外出機会の確保に努めます。さらには、公共交通を補完する移動支援策として、スーパーや医療機関が行っている送迎サービスとの連携や町が主体となった新たな移動手段の確保ができないか検討を進めております。また、令和6年度から始まる第9期計画の介護保険料につきましては、後期高齢者人口や要支援・要介護認定者の増加や介護報酬の改定に伴う介護給付費等の増加により、一定程度の上昇は避けられませんが、保険料段階間の傾斜に配慮した乗率を設定するなど、可能な限り負担の抑制に努めております。

次に、生活環境を守る取組みでは、地域における防犯対策の一環として、新たに町内会・自治会が設置する防犯カメラへの補助制度を実施いたします。これにより、犯罪抑止力の向上はもとより、交通事故・犯罪事案発生時における対応に厚みが増すものと期待しております。災害に強いまちづくりを推進するための取組みとしては、主要国県道沿い等、木造建築物の耐震化及びブロック塀の撤去に対する補助を引き続き実施いたします。また、台風などの自然災害や、立地条件等による街路灯の電線やカーブミラーの支柱や鏡面の損傷を未然に防ぐため、5年ごとの点検を着実に実施し、町道の維持保全に努めてまいります。

近年、二子山山系においてイノシシが生息し、葉山町鳥獣被害対策実施隊により農業被害を中心に被害防止対策を進めてまいりましたが、これに加えて、庭を荒らされるなどの生活被害に対応するため、生活圏域との境界に侵入防止柵を設置し、安心して生活できる環境を準備してまいります。農業振興につきましては、令和5年度に農業委員の皆様にご協力をいただき実施しました町内における農業被害の調査の結果、約3割の農業者が鳥獣被害を受けていることが分かりました。生産した農産物を鳥獣被害から守るため、農業被害防護ネット等の購入に係る補助制度を創設いたします。

次に、下水道事業につきましては、令和5年度より着手した浄化センター及び中継ポンプ場の設備増設事業は順調に進み、令和6年度末には試運転を行う見込みとなりました。管きょ整備につきましても、本管敷設が概ね終了しましたが、私道部分を中心に引き続き整備を進めてまいります。なお、未接続家屋の所有者に対しては、接続にあたっての課題等を把握するため、アンケート調査を実施してまいります。さらに、長期的に健全な下水道経営を維持するため、下水道使用料の改定に向け検討を進め、安定した下水道サービスの提供に努めてまいります。

地域における温室効果ガスの排出抑制を計画的・積極的に進めるため、地球温暖化対策実行計画の事務事業編と区域施策編を一体的に策定しております。気候変動問題に対応するには、各家庭、そして地域全体が自分事として取り組む必要があり、計画を通じて行動変容を促進してまいります。

消防救急体制につきましては、令和6年度及び7年度の2か年にかけて、消防救急デジタル無線システムを更新いたします。このシステムは、通常葉山町内での消防や救急活動において使用する活動波と、神奈川県全域はもとより全国の消防組織とで使用する共通波からなる消防無線システムで、懸念される大規模災害発生時に全国からの緊急消防援助隊との重要な連絡ツールとなります。

また、水難事故への対応としては、購入後12年が経過した水難救助艇を本町の海域の特性に合わせ、小回りが利き岩場においても支障なく救助活動が行える救助艇へ更新いたします。地域防災力強化の取組みにつきましては、車両整備計画に基づき令和6年度は第3分団の資機材搭載型ポンプ車両を更新し、また、神奈川県消防学校内に整備された災害訓練施設において、消防団と消防職員による災害に特化した合同訓練を実施いたします。その中で、更新された消防団車両に車載する救助資機材の取扱訓練についても実施いたします。

さらには、激増する救急要請に、迅速かつ適切に対応するため、将来の出動要請件数を推計し、必要に応じて消防職員の勤務形態や定数見直しを検討し、安心・安全のまちづくりを更に推進してまいります。

 

3点目、「活力を創造する葉山」につきまして、老朽化が著しい臨御橋の架け替えプロジェクトに関して、早期に工事の方針整理を行い、関係機関との協議を継続し、速やかに切れ目のない工事完了までの取組みを実行してまいります。また、みそぎ橋につきましても、令和5年度の点検結果を踏まえ、補修工事に向け設計業務を行います。

次に、規模の大きな土地開発・地域の土地利用につきましては、町民との協働による地域まちづくりを推進して、住民・議会・行政の三位一体の対応が図れるよう、各方面との協議による連携に努めてまいります。地域の公園管理につきましては、地域の方々との協働による整備、保全活動を継続し、インクルーシブの視点を取り入れた遊具の設置推進により、新たな利用者層の創出や地域にとっての価値向上を目指してまいります。

水産振興につきましては、全国的に磯焼けが報告されている中、本町沿岸においても藻場が減少しております。そのため藻場の再生に県や近隣市と連携し、食害生物の除去活動に係る捕獲種の範囲を広げ、対策を強化継続してまいります。商工振興につきましては、町制100周年を記念して、商工業の活性化を図るべくビッグハヤママーケットの来場者に記念エコバッグを配布いたします。住宅リフォーム資金助成事業は、町民のみならず、町内の事業者からも好評をいただいており、地域経済振興と住環境向上の両面から継続してまいります。海水浴場開設と葉山海岸花火大会につきましては、夏の風物詩でもあることから、安全対策や風紀向上に努め開催いたします。

 

4点目、「みんなでつくる葉山」につきましては、行政の情報を正確、迅速、そしてわかりやすくお伝えするために、広報葉山、町ホームページを中心に、各種SNSを活用するなどして広報事業を多角的に展開しております。先行きの見通せない時代においても、町民の皆様が不安を抱かずに行政サービスを利用できるよう、令和5年度にはLINEのセグメント機能活用、送り手と受け手の間の情報の円滑な送受信、オンライン決済機能・予約機能を活用した行政手続きの利便向上を図っており、今後も引き続き情報通信技術の目まぐるしい進歩に遅れをとることなく、時代に即応した環境整備を進めてまいります。

公共施設の老朽化対策としましては、来る令和7年1月の町制施行100周年の機会を捉え、公共施設の今後の大きな方向性をお示しいたします。令和5年度には、町内各地域でタウンミーティングを実施し、ご参加の皆様と直接、今後の公共施設のあり方について意見交換を行いました。本年からは、地域公共施設の具体的な方針を決め、施設の再編に着手しなければいけません。すべてが築40年を超える学校施設については、単に老朽化への対応というハードの側面にとどまらず、施設分離型小中一貫校から義務教育学校(施設一体型)の整備等、教育の内実を高めるべく議論も同時に深め、その方向性を明確に定めることが重要と考えます。これらには莫大な経費がかかるため、同時に町債負担も増えることになります。今の私たちの決断が、将来の葉山町民に感謝されることはあっても、決して後悔されることのないよう、責任と覚悟を持って施設更新のファシリティ・マネジメントを進めてまいります。

令和5年度から準備に取り組んでおりました公共施設への太陽光発電設備設置工事にいよいよ着手いたします。教育総合センター屋上の太陽光発電につきましては、PPA事業の活用により、PPA事業者が発電設備の設置・運用・保守を行い、町は使用した分の電気料金を支払う方式となります。一方、役場庁舎屋上の太陽光発電につきましては、リスク分散の観点から町が直接発注し施工する方式を採用いたします。試算によると、両施設とも電力使用量の約20%強を太陽光により調達することが可能と見込まれており、再生可能エネルギーの活用により、温室効果ガス排出量の削減に資するものと期待しております。

DXの推進では、来庁される方々の手続きに係る利便向上を目的として、マイナンバーカードの活用と職員の聞き取りにて申請書類を完成させ、簡潔に手続きが済む「書かない窓口」を導入いたします。町制100周年を迎える令和7年1月に稼働を開始すべく、役場庁舎1階のカウンター等のリニューアルを含めて取り組んでまいります。

また、公共施設の利用予約にあたり、パソコンやスマートフォンでの予約が可能な施設予約システムを順次導入しており、これまで南郷上ノ山公園テニスコート、学校施設開放において運用してまいりましたが、これらに加え南郷上ノ山公園多目的グラウンド及び野球場並びに福祉文化会館につきましても予約システムを導入いたします。

職員の働き方につきましても、引き続きDXによる業務の効率化を図ってまいります。これまで庶務管理システム、財務会計システムを順次導入してまいりましたが、令和6年度は文書管理システムを導入いたします。これによりペーパーレス化の一層の推進、保存文書の大幅な削減が期待できます。

令和7年1月の町制施行100周年に向けて、大きな節目を町民、関係団体、事業者などオール葉山で迎えられるよう、令和5年度はロゴとキャッチフレーズを作成し、様々な広報媒体やノベルティグッズ等に用いることで周知を図ってまいりました。また、町民の皆様が自主的に行う事業につきましては、公共施設の使用や事業費補助などの支援を行っております。行政としても、町の100年の歴史を振り返る一助とするための町史や記念誌の編さん、秋の文化祭シーズンに合わせ記念式典も予定しております。さらには、令和元年に作成し好評をいただきました50cc~125ccのオートバイのオリジナルナンバープレートに100周年記念のロゴをあしらって再度作成し、本年秋頃より交付できるよう準備を進めてまいります。そのほかにも、多くの方々が参加できるような100周年を祝う催しを一緒に企画してまいります。一人でも多くの方が葉山を好きになり、いつまでも住み続けたいと思っていただけるような節目になることを強く願ってやみません。

 

古くから人々を惹きつけてやまない風土の葉山が、そこに住む人々に高く評価され、昨年12月、2年連続で「住み続けたい街ランキング日本一」を頂戴いたしました。引き続き、この魅力ある土地に対する感謝を忘れず、葉山が好きで、葉山を大切に思う人々が集まって協力し合い、将来にわたって子どもたちの笑顔が溢れる町を目指して、全力を尽くしてまいります。

その原動力となる町役場は、本年春に会計年度任用職員(非常勤職員)の処遇改善を予定しています。今後は「常勤」「非常勤」ではなく、葉山町役場の一職員として、短時間勤務の方々にも個人の能力と適性に応じた活躍を期待し、雇用形態による意識の違いを可能な限りなくす方向にシフトします。そして、それぞれの部署が自立しながらも、有機的に連動し、縦横に連携する葉山町役場であり続けられるよう、「笑顔と愛と挨拶」を忘れずに、町民サービス向上に一丸となって働いてまいります。

一方で政治は、先の見えない、この厳しい時代において、多数に迎合するのではなく、いまと将来の葉山町、日本の持続と幸せを視野に広い意見を取り入れ、将来の町民の願いを想像して、真摯に修正を図りながら、葉山を良い方向に導いていかねばなりません。そのため、ときにはいまの町民の皆様にとっては、厳しい判断をしなければならないときもあるかと思います。葉山の品格を守り、住む幸せ、ウェルビーイングを実感できる、私たちの葉山の素晴らしさをさらに磨きます。そして将来にこの町が愛され、住んでよかったと思ってもらえるまちづくりのため、政治家としての矜持を持って、リーダーシップをとります。

議員の皆様におかれましては、令和6年度予算案並びに関係議案につきまして、ご賛同賜り、引き続き、ご指導ご鞭撻いただけますよう、なにとぞよろしくお願い申し上げます。

 

  • 町長施政方針は、下記からダウンロードできます。

過去の施政方針等は下記よりご覧ください。

更新日:2024年02月16日