平成30年度町長施政方針

平成30年度(2018年度) 町長施政方針

葉山町長 山梨崇仁

平成30年度予算案の提出にあたりまして、施政方針を申し述べる機会をいただき、深く感謝申し上げます。

昨年は町内外、そして海外に向けて葉山をアピールする大切な機会を得ました。それは、東京2020オリンピック・パラリンピックに向けた取組みです。海外チームをお迎えするにあたっては、語学ボランティアやヨット協会、議会や地域の皆様、そして子どもたちの力もお借りして、葉山流のおもてなしを海外に示すことができました。また「葉山好き」な町外の皆様の力をお借りできたことも成功のカギでした。引き続き、ヨット乗船体験などにより、町民がヨットに触れる機会を創出するほか、外国人おもてなし講座の開催やセーリングワールドカップへの協力など、「近代日本ヨット発祥の地」である町が主体的にPRやおもてなし意識の向上に取り組むことで、葉山の名が、世界の「HAYAMA」として認知されるブランドとなるよう挑戦をしてまいります。
今年度も引き続き、「葉山の強みを伸ばす挑戦の年」として皆様にお世話になりますが、広くご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げます。

 

さて、平成30年の幕明けは昨年同様、静かな、まさに葉山らしい穏やかな日々でした。1月8日に行われた成人式では、新成人の実に8割にものぼる241人の新成人が式典に参加するなど、とても喜ばしい場面もありました。将来の葉山の担い手がこれほどまで多く一堂に会し、気持ちを一つにしていただけることに、とても心強く思います。本年度は、葉山町の長年の懸案事項に向き合い、挑戦する年でもありますが、一方でそれは未来への投資だと認識しています。いまの私たちが選択したことが若い皆様の後世において、良い選択だったと評価されるよう、強い覚悟と責任をもって行政運営に臨んでまいります。第4次総合計画のPDCAサイクルを用いた事業の振り返りや中期財政計画による支出の平準化、そして創意工夫と柔軟な発想で、行政サービスの質の向上、最少の経費で最大の効果を上げる効率化を達成してまいります。

国では、1月22日に「平成30年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」を閣議決定し、今後の経済財政運営に当たっては、引き続き、「経済再生なくして財政健全化なし」を基本とし、少子高齢化という最大の壁に立ち向かうため、「生産性革命」と「人づくり革命」を車の両輪として取り組む一方で、財政健全化への取組みとして、本年度予算においては、「経済・財政再生計画」に掲げる歳出改革等を着実に実行することとしています。一方、発表された県の平成30年度予算においては、最終的な財源不足を事業の見直しや29年度からの財源活用、そして2年連続で減収補填債を発行するなどして、ようやく収支を均衡させたことから、今後の市町村財政への影響も懸念されるところであり、引き続き、自主・自立的な財政運営を目指さなければと気を引き締めております。

今後の葉山町の財政状況を見通しますと、歳入面では生産年齢人口の減少の影響等により、町税をはじめとする一般財源は、中長期的には減少していくことが見込まれます。一方、歳出面では扶助費等の社会保障経費が年々増加しているうえに、学校給食センターの建設、汚水処理施設整備計画(アクションプラン)の推進、既存のクリーンセンターの解体と再整備、公共施設等の老朽化対策など、複数年にわたり多額の費用を要する事業が控えていることからも、経常的経費及び投資的経費両面において財政需要は増加します。今後数年間は、これまで以上に健全財政の維持に留意しながら、財源の確保を図り、中長期的な視点を持って、行政課題に対応してまいります。過大な借金で毎年の公債費を膨らませないこと、選択余地のない将来になるような、負の遺産をつくらないことを基本としてまいります。
しかし、町民の皆様への還元も大切です。増加する扶助費から目を背けることはできませんが、新たな暮らしのゆとりには政策相互のシナジー効果や行政的な投資対効果が見込めることを大切にして、いわば付加価値の創出が見込める事業を福祉、健康、そして将来への希望である教育分野を中心に充実を図ります。

 

遊び、楽しむという視点も忘れず、「葉山の魅力を高める実行委員会」で議論を重ねてきた「山」を活用した構想は、具体的な整備にかかります。町の財産である海に続いて、山の魅力を活用したり食の文化を発信したりなど、葉山の上質な空間、気品ある葉山の魅力を磨き、高めることで「いつかは葉山へ」と思ってもらう地方創生の本旨を達成してまいります。
さて、昨年は南郷活性化事業における葉山ステーションが開業から1周年を迎え、週末を中心に変わらず賑わう様子がうかがえ、町内外から多くの人が集まっていることにとても嬉しく思っています。一方で、本年は6月に民泊事業の事実上の解禁があり、今後はそういった来訪者の方々が町内にも多く、「宿泊者」として訪れることを想定して、近隣住民へ迷惑のかからない高質な民泊の推進を目指したいと考えております。そのためには民泊の管理事業者や宿泊事業者との協議を重ね、葉山の暮らしを理解してもらえる方々が訪れるような事業として、観光振興を図りながらも、葉山の住環境をともに守る事業推進となるよう促してまいります。

 

昨年より検討を重ねてきた町村会を通じたシステム利用では、全国のコンビニエンスストアや郵便局などで住民票や戸籍証明等が取得できる便利なシステムを導入する議論を本格化させ、遅くとも平成31年度までに導入する目途を立てます。また、三浦半島サミットや神奈川県の三浦半島魅力最大化プロジェクト、京浜急行電鉄の葉山女子旅きっぷなどの自治体や民間企業の応援やコラボレーションも非常に重要で、三浦半島の観光振興のみならず、町の広報戦略などにも民間の力をお借りしつつ、協力関係を築いてまいります。今後も葉山好きな多くのステークホルダーの皆様と、お互い様の気持ちをもって双方にメリットのある関係を築けるよう積極的に取り組んでまいります。

 

自治体連携については、改めて長年にわたり課題とされてきた葉山町のごみ処理事業について、昨年12月に逗子市との連携をまとめた「循環型社会形成推進地域計画」を環境省に提出するに至り、コストと安定処理のバランスのとれた事業の構築へ向けて大きく前進することができました。それを受けて、本年度は逗子市との可燃ごみの全量処理と最終処分の連携、し尿・浄化槽汚泥の受入れを行い、今後は容器包装プラスチックや植木剪定枝処理などに広げていくことで、双方にメリットのある協力関係としてまいります。
また、群馬県草津町との姉妹都市締結から50周年という大きな節目を迎える年でもあり、相互に記念事業のあり方について模索しております。1月23日に発生した本白根山の噴火を受けて観光客の減少が大きな課題となっていることから、15年連続日本一を誇る温泉の町を姉妹都市である葉山町からも応援し、一日も早い賑わいの回復に寄与することを願って取り組んでまいりたいと考えております。

 

さて、公共施設やインフラの老朽化等にかかる事業費については、その多くが施設整備、空調などの維持補修やその設計にかかる経費となりました。今後は大規模な整備事業がありますが、公共施設等総合管理計画に基づいて個別の施設の管理、将来方針を検討する中であっても、利用者にとって即時対応が必要なことにはできるだけ速やかな対応をとるよう努めてまいります。
その大規模事業の一つである学校給食センター建設につきましては、昨年12月、教育委員会において建設調査が実施され、予定建築物の構造や規模、工事スケジュール、概算工事費等が新たに示されました。本年度はこの調査結果を踏まえ、具体的な設計業務を進め、平成33年の運用開始を目指してまいります。学校給食の提供につきましては、「安全安心かつ衛生的で、栄養バランスがとれ、温かくておいしい給食」を基本理念として、新たに「学校給食基本計画(仮称)」策定の検討を始めてまいります。この計画では、献立づくりをはじめ、食育への活用やアレルギー対応など、学校給食センターの運営に係る様々な方針を定めるほか、学校事務の大きな負担となっている給食会計の公会計化に係る方針などをお示ししたいと考えております。育ち盛りの大事な時期に安心で、しっかりと栄養管理された食事が提供できるよう、誇れる葉山の給食提供に向けて、引き続き議論を進めてまいります。


さて、それでは平成30年度の町民の暮らしにかかわる主な事業につきまして、第四次葉山町総合計画の基本理念に沿って、ご説明申し上げます。

一点目、「人を育てる葉山」につきましては、小児医療費助成制度を所得制限なしで中学校3年生まで拡充すべく準備してまいります。なお、本年10月に基幹系システムを入れ替えることから、システム更新による二重投資を避けるため12月診療分からの拡充とはなりますが、近隣市との比較でも決して劣らない先進性を確保できるものと考えております。さらに、産後ケアの実施や子育て支援センターの機能強化、待機児童対策として新規保育園の設置など、安心して子育てができる環境づくりを積極的に検討してまいります。
また、教育環境につきましては、次期学習指導要領における「小学校英語の教科化」「児童生徒の情報活用能力の育成」に向けて、移行期間が始まる本年度から、新たに英語の町費教員を雇用するとともに、教員用タブレットを導入し、より手厚い態勢を整えてまいります。

二点目、「暮らしを守る葉山」につきましては、盛り上がりを見せる貯筋運動に商工団体の発展をリンクさせ、葉山カードによるポイント制を導入してまいります。また、健康増進のための外出支援策として、京浜急行バス、ふれあいパスの購入費助成を70歳以上の皆様へ提供するとともに、高齢運転者による自動車事故を防止するための運転免許返納の啓発も同時に進めてまいります。
そして、高齢化が進む中、高齢者やその家族が安心して生活を送れるよう、地域包括支援センターの増設を図ります。また、生活支援コーディネーターの配置を行い、暮らしに密着し、お互いが顔の見える福祉のあり方を構築するとともに、小地域福祉活動の活発化や福祉事業者、訪問看護ステーションや地域医療機関と行政との密接な連携を強化し、医療福祉の包括連携をさらに強化してまいりたいと考えております。
前述のとおり、ごみ処理事業においては、2市1町の広域連携の取組みを進めており、本年度は逗子市への可燃ごみ搬出に対して、町ではし尿・浄化槽汚泥を受け入れ、同時にクリーンセンターの再整備に向けても測量や計画策定に取り組み、長年の課題であった既存施設の解体、新規処理施設の設置を着実に推進してまいります。
下水道事業においては、公営企業会計への移行がいよいよ開始されますが、浄化センターの耐震化や配管整備における官民連携手法の導入、合併浄化槽設置と維持管理の補助など全面的に進めることで、全町的な水環境の向上を着実に図ってまいります。
防災については、町民の安心・安全の確保に向けた自主防災組織の基盤強化に向け、避難所運営委員会の設置や防災リーダーの養成を行うほか、体験型の総合防災訓練を引き続き実施し、自助・共助についての啓発を図り、災害対応能力の強化を図ります。また、町内会・自治会が公共空間を撮影する防犯カメラの設置を支援し、地域防犯力を高めるなど、実行力のある施策に取り組み、防災・防犯体制の充実を図ってまいります。

三点目、「活力を創造する葉山」につきましては、引き続き葉山の魅力を高める実行委員会のイニシアティブにて”山”の活性を図りたいと考えております。実際に一般の方々が山に入れる機会を創出し、休日を楽しめる場所として具体的に提案してまいります。
一方で、昨年度目指した旧役場前バス停への屋根の設置については、町幹部で検討を進めるほか、外部の力をお借りしてまいりましたが、様々なお声をいただく中で、本年も引き続き検討課題とし、葉山の景観に沿う趣のある空間になることを目指してもうしばらく議論を続けてまいりたいと考えております。
ところで、葉山町は職員の技術部門において土木や建設工事のうち、簡易なものについては直接施工する技術を保持しています。本年度はそういった技術の向上、即応力の強化を図りつつ、安全衛生委員会の指摘を踏まえ、夏の暑さなど、昨今の異常な気象状況に対応するため、現場業務に従事する職員の労働環境改善にも取り組んでまいります。

 

最後に、事務事業を執行する行政の組織について申し上げます。本年度も引き続き、「チームにおける目標設定」「情報連携による共通認識の醸成」そして「みんなが一つの目標に向かって邁進する」そういった仕事の進め方を大切にしてまいりたいと考えております。昨年は役場1階のローカウンター化や照明の照度アップを図りましたが、それに合わせて総合案内の設置を行いました。これは接遇向上とローカウンター化の検討をしてきた職員検討会からの提案を受けたもので、設置の効果は非常に高い評価を、町民の皆様、内部の職員からも得ています。まさに現場を知る職員同士の連携から実現した施策でした。また、役場の最前線で各お宅を回っているクリーンセンターの戸別収集も同様に町民の皆様から高い評価を受けております。役場のサービスセンターとして今後の発展を議論しており、そのさらなる前進に期待をしています。これらはたまたま私のところへ声が届いた事例を申し上げましたが、他にも多くの部署で「役場が変わった」「職員の方の対応に感謝している」という声が届いています。町民のため一つの目標に向かうチームとして団結し、所属部署の事業にとらわれない、縦割りを打破する幅広い横連携による仕事をしっかりとこなす姿勢が、葉山町役場の信頼を勝ち取っていることを肌で感じられるようになったことは本当にうれしいことで、何よりも職員の皆さんに感謝を申し上げます。そして、引き続き、満足度の向上へ終わることのない改善を重ねていただきたいと思います。

 

昨年を振り返ってみると、強くなった財政や役場のサービス向上があり、町の人材としてはハイレベルなボランティアがいらっしゃり、全体でも公共に協力しようという高い民度があることなど、改めて葉山町の土地や人の持つ高い価値を認識することができ、私自身も感動と自信につながる大きな成功体験を得ました。しかし、日本全体で人口減少が進む中で、葉山町も人口減少は着実に進んでおり、私たちはいまこそ、新たな葉山ブランドの構築に力を入れなければならないと考えています。
私はバブル経済崩壊後、戦後最大の就職氷河期に社会に出て、世間の厳しさ、自分の足でお金を稼ぐことの厳しさ、そのために乾いた雑巾をさらに絞るように、身体に負担をかけ、知恵と工夫を絞り出す苦しさを経験してきました。
「昔はよかった」「あの頃もっとこうしておけば」そのような言葉を幾度となく聞いてきた世代として、同じことを後世の町民の皆様が感じることのないよう、徹底した将来の洞察と想像を重ねて、葉山を愛する皆様とともに、将来の葉山を想像し、将来の子どもたちの笑顔のために先の見えないこの時代を乗り越えていきたいと思います。

 

葉山町長という仕事を預かって6年、「葉山らしく、静かな改革」と心に決め、少しずつの変化、しかし課題を乗り越えてきました。「町民が休日を町内で楽しめる町」、そして世界中から「いつかは葉山へ」と言われる町を目指して今年も初心を忘れず、働きます。平成30年度の行政運営にも引き続き全力を挙げて取り組んでまいりますので、議員の皆様におかれましては、一層のご理解とご協力とともに、ご賛同を賜りますようお願い申し上げます。

 

  • 町長施政方針は、下記からダウンロードできます。

 過去の施政方針等は下記よりご覧ください。

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更新日:2018年02月13日