平成29年度町長施政方針

平成29年度(2017年度) 町長施政方針

葉山町長 山梨崇仁

 平成29年度予算案の提出にあたりまして、施政方針を申し述べる機会をいただき、深く感謝申し上げます。私はこれまで防災や子育て、健康というテーマで、町民の皆様と町職員が同じ目標に向かって、「一つになる力」を大切にしてまいりましたが、平成29年度はそうして培ってきた力、協力体制の中で見えてきた様々な可能性や新たなニーズに向き合っていく、いわば「葉山の強みを伸ばす挑戦」をしてまいりたいと思っております。町民の皆様、町内外の団体や事業者の皆様、議会をはじめ関係者の皆様、そして多くの職員とともに引き続き「町民が休日を葉山で楽しめるようなまちづくり」、「町外の方に『いつかは葉山へ』と思ってもらえるまちづくり」に全力を挙げて取り組んでまいりたく、広くご理解とご協力を賜りますようお願いいたします。

 さて、平成29年の年明けは素晴らしい天候のもと富士や丹沢の山々を幾日も望めた葉山ですが、海外では新しいアメリカ大統領の施政や発言に連日、さまざまな波紋が広がっています。今後、世界経済や国家間の関係にどのような影響があるのか現時点では計り知れないところではありますが、雲行きすら見えない、先の見通せない国際状況に、いま様々な緊張感が増していることは間違いありません。

 国においても地方創生について、年始の安倍内閣総理大臣の施政方針演説では、「故郷(ふるさと)への情熱を持って、地方創生にチャレンジする。そうした地方の皆さんを、安倍内閣は、全力で応援します。」としておりますが、地方交付税総額は前年対比4,000億円、2.2%減の16.3兆円で、平成28年度の1,000億円、0.3%減から減少幅はさらに大きく拡がっています。地方の魅力創造、活性化、定住促進へのチャレンジを求めているものの、財政的には厳しい現実があることから、国の方策についてもどのように影響されるのか、細かく情報収集し、緊張感を持って向き合っていかねばなりません。

 神奈川県においても、平成29年度予算編成では880億円の財源不足となり、リーマンショック以降7年ぶりに減収補填債を発行するに至りました。ここ数年、年度内の県税収入の増で翌年度の財源不足を賄う状況が続いていましたが、平成29年度は例年以上に厳しい状況に置かれていることから、ふるさと納税などさらなる歳入の確保と徹底した歳出の抑制に取り組むとしており、少なからず町にも影響があるものと留意しております。

 葉山町におきましても、平成27年度決算で歳入の根幹を成す町税収入は、町民税の譲渡所得が減ったことなどから、平成26年度決算から比べると2億3,764 万8,000 円の減、町税全体でも56億円台に留まりました。

 一方歳出面では、扶助費や繰出金、補助費等も増加傾向を示しており、経常経費全体では増加しています。今後も社会保障関係経費や施設の大規模改修経費の増加が見込まれる中にあって、引き続き効率的な行政運営に努めるとともに、基金や町債については中期財政計画に定める「めざそう値」に沿って、計画的に管理していくことが求められます。また、平成29年度は第四次総合計画の実施計画(第1期前期)が終了する年度です。限られた財源を、町民にとって真に必要なサービスへ充てるために、実施計画事業の振返り内容を踏まえて更新を行い、財政的裏付けを得ながら次期の実施計画の推進を図っていかねばなりません。

 さて、昨年はテーマ「健康」の2年目の年として、健康増進施設利用券の配布や葉山体操や貯筋運動など、多世代の方々にライフスタイルを見直して健康を実行する年として、イベント参加や生活習慣の改善など、「行動」をお願いしてまいりました。また一方で、広報の分野ではスマートフォンアプリ・インスタグラムを活用し、自治体アカウントとして国内フォロワー数ナンバー1(現在は2位)になり、「いつかは葉山へ」の定着に向けて、町の価値を若い世代中心に届けられる強みを得ました。また、民間事業者の協力で若い女性を中心とした来町者も増えたうえに、長年の期待であった南郷活性化事業における葉山ステーションがオープンするなど、町の内外に社会の健康として賑わいを創出した年でもありました。一次産業の活性化につながる市場機能に併せ、交流拠点として町の内外から愛され、人が集まる場所にするべく、引き続き、この地域の可能性を育て続けたいと考えております。

 ただ、一方で全国的に葉山の名を汚すような事件と報道があったことも事実で、多くの葉山を愛する人々の心を傷つけました。しかし、私たちはそれを支えるように、動じず、ぶれずに役場としての強さを維持し、議会の皆様をはじめ、町民の皆様と信頼回復に力を尽くしてきました。苦境の中でも前を向いて頑張ろうという結束をし、乗り越え、葉山の強みのひとつを再認識した年でもあります。平成29年度は、そういった結束力を大切に、他の協働の取り組みの中で見えてきた課題や可能性、アイディアと向き合い、葉山町の自治体職員としての誇りを持って町の「強み」を伸ばしてまいりたいと考えております。

 次に、自治体間の協力関係について申し述べます。広域行政については、ごみ処理事業で前町政から行政間の訴訟にまで発展した経緯がありましたが、改善に努め、ようやく新たな関係構築が一つの形になりました。逗子市とのパートナーシップに鎌倉市を含めた広域連携の覚書締結を行い、近隣自治体と良好な関係で手をつなぐことができるようになりました。ひとえにごみの排出抑制や分別に尽力してくださっている町民の皆様のご協力があってこそのことと考えておりますが、今後、これを受けて、逗子市との可燃ごみの処理と最終処分の連携を行い、その後は容器包装プラスチックや植木剪定枝などに広げていくことで、双方にメリットのある協力関係を築いてまいりたいと考えております。また、町村会では、全国のコンビニエンスストアや郵便局などで、住民票や戸籍謄本が取れる便利なシステムを小さい町でも連携することで導入できないだろうか提案、議論しており、実現に向けて積極的に取り組んでまいりたいと考えております。そして、三浦半島サミットや県内他市町村はもとより、神奈川県とのつながりも非常に重要で、三浦半島の観光振興や町における健康の取り組みのバックアップをいただくなど、自治体規模に関わらず相互関係を築いてまいります。今後も自治体間パートナーシップを模索し、お互い様の気持ちをもって葉山町と双方に効率的、効果的な行政運営となるよう積極的に取り組んでまいります。

 さて、本年度の予算では昨年度の1.8倍の実に2億8,000万円超が施設整備、空調などの維持補修やその設計にかかる経費となり、いよいよ公共施設整備にかかる時期となりました。いずれも町民利用の盛んな施設や重要施設に重点を置いており、空調をはじめ、快適で安全な施設維持を検討し計上しました。今後の公共施設全体につきましては公共施設等総合管理計画に基づいて個別の施設の管理、将来方針を検討してまいりますが、できること、利用者にとって即時対応が必要なことにはできるだけ速やかな対応をとるよう努めてまいります。

 新規施設の建設につきましては、昨年9月に教育委員会から提出された「葉山町学校給食基本構想」を踏まえ、小中学校6校の給食を一括調理する給食センターを建設することとします。既に建設予定地の地質調査や測量が終わり、これから具体的な施設の方向性について本格的な議論を始めます。食の安全や地産地消、食育を含めて給食には時代に即したあり方が必要ですが、センター化に向けては不安を感じている方もいらっしゃいますので、今後も丁寧に説明する機会を設けていきたいと考えています。中学校の完全給食導入はそもそも大きな転換です。育ち盛りの大事な時期にしっかりと栄養管理された食事が必要で、また働く女性の社会進出にともなう社会の要求でもあり、大切なことです。安全で、おいしく、栄養がある、この3点を絶対要件として、誇れる給食提供に向けた議論を進めてまいりたいと考えております。

 東京2020オリンピック・パラリンピックにつきましては、開催が3年後となりました。昨年は外国人サミットの開催や外国語に精通した方にボランティア登録をしていただくなど、町の国際化に向けた準備を着々と進めましたが、これは葉山町の町民の皆様をはじめとした協力していただける「人財」を活かす仕組みづくりの第一歩でもあり、葉山の潜在的に秘めた力を行政主導で引き出して行こうと考える一つです。

 昨年、「日本ヨット発祥の地」として町民の皆様にヨットに触れていただく体験会を4回開くことができましたが、本年度も引き続き乗船体験会を開催しヨットに触れる機会創出を図ってまいります。また、長年継続してきたヨットスクール事業では、安全管理からコーチボート(レスキュー艇)の更新を図ってまいります。なお、現在、国際交流と連動してスクール生とトップアスリートが交流する機会などを目指して、東京2020オリンピック・パラリンピックに関する町のかかわり方を模索しておりますが、葉山を国内、世界にアピールする絶好の機会ですから、今後は写真や動画をベースとしたSNSなどを大いに活用しながら葉山の認知度を上げ、ブランド価値を高めていきたいと考えています。

 なお、その際には「仮称;葉山の魅力を高める実行委員会」を開催し、町の財産である海に続いて、山を活用したり食の文化を発信したり、その他葉山の上質な空間、気品ある葉山の魅力を高めることで、いつかは葉山へと思ってもらう地方創生の仕掛けを作ってまいります。また、神奈川県広報コンクールで『広報はやま』が3年連続最優秀賞を得た実績を活かし、さらに町民の皆様と町役場、関係団体とのつながりを強め、住民の皆様がこの町に住んで良かったと思ってもらえる魅力の創造と発信に努めてまいります。

 さて、それでは平成29年度のまちづくりにかかわるその他の主な事業につきまして、第四次葉山町総合計画の基本理念に沿って、ご説明申し上げます。

 一点目「人を育てる葉山」につきましては、学校給食センターの設計業務をはじめ、平成28年度補正予算計上した葉山中学校グラウンド整備など、その名の通り、子どもたちを育てる環境整備を着実に推進してまいります。また、昨今のスポーツや文化活動の活躍を受けて、中学校部活動の全国大会や関東大会に出場する生徒に一定の補助を行うこととしました。また、しおさい公園が設立30周年を迎える年となるため、記念事業を行い、町民のみならず、多くの子供たちに海洋研究の成果を見て感じてもらえる事業を行ってまいります。

 二点目、「暮らしを守る葉山」につきましては、引き続き、「健康」をテーマとして取り組んできた葉山体操や貯筋運動など、さまざまな取り組みを発展的に行うとともに、神奈川県の協力も得て、睡眠について深く研究する機会を講じてまいりたいと考えております。人生の3分の1の時間を占める睡眠を改善することで、未病対策の大きな礎として貢献できれば幸いです。

 介護・医療につきましては、国の介護保険法の改正にともない、町としても第7期の介護保険計画の改訂に向けて準備を進めてまいります。町内会や小地域福祉活動、社会福祉協議会の協力を得て、地域福祉活動の足もと固めを行うとともに、介護予防事業を同時推進することでいつまでも元気で暮らせる町を目指します。また、在宅医療の推進には地域包括ケアシステムの拠点を逗子市と協力して設定することで、逗葉の医師会、歯科医師会、薬剤師会の協力を得て、人生の最後を住み慣れた町、自宅で過ごせるよう患者の意向に沿った医療・介護体制を提供できるよう努めてまいります。2月6日付の読売新聞では、20万人以下規模の自治体で本町が全国3位の在宅看取り率が報道されました。より家族や本人に心身の負担がかからない体制のさらなる充実を議論し、進めてまいりたいと考えております。

 ごみ処理事業においては昨年、町民の皆様と取り組んだ「きれいな資源ステーションプロジェクト」の成果を受けて、分かりやすい看板の設置を図ったり、分別にご意見をいただいていたミックスペーパーの分別袋を配布することで、負担のかからない範囲で、さらなる町内美化、分別の促進を図ってまいります。

 下水道事業においては、10年概成により市街化区域における下水道敷設の計画を提出いたしますが、それにともない、市街化調整区域の排水を徹底的にきれいにするため、合併浄化槽導入、転換の促進補助を大きく行います。

 その他、防災力のさらなる強化にマンホールトイレの備蓄や感震ブレーカーの購入助成や、土砂災害警戒区域内の立木伐採の助成などを進めてまいりますが、総合防災訓練につきましては、昨年の一色小学校での総合防災訓練のように、学校や避難所運営委員会と協議し、順次実際を想定した宿泊訓練を行います。また職員の災害対応訓練におきましても、より実践に近いことに重きを置いて取り組んでまいります。防犯については、防犯カメラ設置補助制度の創設や振り込め詐欺防止装置の購入助成など、町民の安全と安心の確保のため、キメ細やかな施策の推進を緩めることなく取り組んでまいります。

 三点目、「活力を創造する葉山」につきましては、昨年県と協力して取り組んだ旧役場前バスベイが完成し、ライオンズクラブ様の協力でベンチを設置いたしましたが、当該町有地の売却費用をもって、地域住民の利便向上にバス停に屋根の設置を行います。かつての役場前であり、御用邸にほど近い場所であることから、葉山の景観の一つとして趣のある空間になることを目指してまいりたいと考えております。また、長年の懸案事項でありました芝崎地区の海岸高潮対策工事につながる真名瀬漁港護岸の実施設計に入ることや夏の海水浴場の警備強化やマナーアップにさらなる進展を図ることで、より快適で安全な海岸の確保を図ってまいります。

 四点目、「みんなでつくる葉山」につきましては、新たな情報発信媒体としてテレビ神奈川のデータ放送を活用して防災情報等を発信することで、気象状況の悪いときの防災行政無線をテレビで確認することができたり、町のイベント情報やお知らせを発信することができたりする仕組みを講じて、さらなる情報発信の強化を図ります。また従来どおり、インスタグラムや広報はやま、ホームページを用いて、町の内外に情報発信をすると同時に葉山の景色や活気をお伝えすることで、葉山の良さに触れる機会を確実に届けてまいります。

 また、良好な住環境の維持と防犯の面から、空き家対策として「空き家を発生させない」「発生した場合は数を減らす」というステップの予防対策とともに、不動産事業者等と連携して、流通性を高める仕組みを整えてまいります。

 次に、事務事業を執行する行政の組織について申し上げます。平成29年度は、機構改革による組織改編の振返りを行います。役場庁舎1階のローカウンター化から総合案内の設置に向けた議論を進めておりますが、同時に第二期窓口業務等接遇向上に関する職員検討会による職場の整理整頓を進め、お客様を気持ちよく迎える役場の空間づくりを継続してまいります。事務執行の適正化につきましては、事務執行適正化委員会の報告書をふまえ職員の意識改革に役立ててまいります。

 情報収集・分析力の強化と連携は絶えることなく進めなければなりません。より仕事がしやすく、より町民の皆様のニーズに応えられる役場であるために、大切なことは変化を恐れず、いまある状況を客観的に分析・整理し、今後の最善策をより多くの情報から見つけ、判断することです。「チームにおける目標設定」「情報連携による共通認識の醸成」そして「みんなが一つの目標に向かって邁進する」そういった仕事の進め方を大切にしていきたいと思います。

 昨年は返礼品制度を取り入れたふるさと納税をスタートさせるも、平成28年分の納税寄付額は、平成27年分の流出寄付額と比較すると1,000万円近く少なく、寄付者の意向を汲みたいものの、財政的な赤字補填も考えなければいけない状況です。現行制度の改善を求めると同時に、他に寄付を募る方法を模索してまいります。また、引き続き、企業とのコラボレーションなど外部の力もお借りしつつ、町としての財源確保に取り組んでまいりたいと考えております。

 しかし、こういったすべての事業の実現には町職員の専門性や行動力、また私自身の活動の質を高め、幅広く活躍する役場でなければいけません。若いと言われた私も40歳を迎える年となりました。町民の皆様の優しさ、つながる強さに支えられながら邁進してまいりましたが、これからは若さに経験を交えて、皆さんが安心してお任せいただける役場とするため、任期6年目の挑戦をしてまいりますので、どうぞご期待ください。

 以上、私の施政方針を述べさせて頂きました。平成29年度の行政運営にも引き続き全力を挙げて取り組んでまいりますので、議員の皆様におかれましては、層一のご理解とご協力をお願い申し上げますとともに、ご賛同を賜りますよう、どうぞよろしくお願い申し上げます。

  • 町長施政方針は、葉山町役場1階情報コーナーと図書館でも閲覧ができます。
  • 町長施政方針は、下記からダウンロードできます。

 過去の施政方針等は下記よりご覧ください。

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更新日:2018年02月13日